表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

2.だれか俺たちを助けてくれ!!

『愚かなプレイヤーたちよ、踊りなさい。私の作ったこのデスゲームの中で!』


 新宿の街頭モニタがふいに暗転し、ドミ子の甲高い声が雑踏を貫いた。

 行き交う人々が足を止めた。老若男女貴賤忙閑を問わず、だれもかれもが足を止めた。

 その日、その瞬間、ネットワーク上に存在するあらゆる映像媒体が何者かにジャックされた。


『ガイアクラフトは生まれ変わった』


 動画配信サイトで映画を楽しんでいた男性は、不自然に切り替わった映像に首をかしげた。


『この世界での死は現実での死を意味する! あなたたちの運命はもはや私の掌上……逃れることも抗うこともできない』


 ジャックされたテレビから流れ続けるドミ子の声が、家族団らんに水を差した。


『助かる方法はただひとつ――全てのプレイヤーを殺害せよ!』


 絶叫とともに雷鳴が走った。赤いローブに身を包んだドミ子の姿が明らかになり、さらにその背後にはいくつもの巨大な影――赤黒く染まった不吉な空の向こうで、見目おぞましい悪魔が群をなした。ドミ子は両手を広げ、甲高い笑い声をあげた。


『――ふざけるな!』


 突然、画面中央に棍棒を握った腕が突き出されドミ子の姿をさえぎった。


『俺たちはこんなゲームには絶対に屈しない!』


 カメラが引き、悪魔の群に立ちむかうゲンタの姿を映し出した。


『俺たちは力を合わせて必ず生きてここから帰ってやる、お前の思う通りにはならない!』

『面白い、やってみるがいいわ。ただし敵はプレイヤーだけではないことを覚えておくことね!』


 ドミ子の合図とともに悪魔の口から火炎がほとばしった。


『ぐわあああああああ!』


 凄まじい絶叫とともに画面が赤一色に染まった。


『大丈夫かギンタ! 双子だから俺と声のよく似たギンタ!』『双子の兄さん……弟であるボクはもうダメみたいだ……』『ギンタ! しっかりしろギンタ、ギンターーーーー!』


 赤く染まった画面の向こうから、どう聞いても同一人物の声で悲壮なやり取りがかわされる。


『よくも……声のよく似た俺の弟を、よくも!』

『アーハハハ! 恨むなら自らの無力さを恨むことね、声のよく似た兄の人! あなたは私に指一本触れることは敵わない、なぜなら私はこの世界の神――全知全能の管理者なのよ! あなたを葬り去ることはもちろん、日本中の映像をジャックすることだって造作もないわ!』

『お前っ、日本中の映像をジャック、とか、お前、ふざけるな! 打ち合わせにないセリフ言うな!』

『えっ、あっ』

『黙れ! 不安になってんじゃねえ! 行くぞウオオオオオ!』

『こ、小賢しい、無駄だと言っているのよ!』


 ふたたび悪魔の口から火炎が迸り、ゲンタはもんどり打ってその場に倒れた。


『オーホホホ! そうやって地面に這いつくばるのがお似合いよ、全国四十七都道府県のお茶の間に醜態をさらすがいいわ!(※一部地域を除く)』

『クソ……負けるのか……こんな……映像ジャックするときまでローカル局に気を使うようなやつに! 俺だけじゃ勝てない……だれか……』


 カメラが切り替わり、ゲンタの顔がアップになった。


『だれか……誰か俺たちを助けてくれ! この絶望のゲームは、ログアウトはできないし死んだら現実でも死ぬけど、絶賛新規プレイヤー募集中なんだ! ド派手なスキルと奥深いやり込み要素、さらには豪華な声優陣! そして壮大な冒険と強大な使命が約束された、基本無料のデスゲームに参加してくれーー! ガイアクラフトで検索してくれーーーー!』


 ゲンタの悲痛な叫びと同時に、ガイアクラフトのロゴと会員登録サイトへ誘導するURLが出現した後、映像は終了した。


 目撃者たちがかしげた首は、しばらく元には戻らなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ