釣り
今日は順番を変えて墨巣さんが先だ、俺はと言うと海に向かい釣竿を投げて暇潰しだ、釣れるとは全くこれっぽっちも微塵も欠片も思ってはいないから形だけだ、針はサバイバルキットの釣り針だが餌は疑似餌で毛糸とか結び付けているだけで奇跡的にゴカイか何かと間違えて食らい付けば良いなくらいでポイントやら潮目やら適当だ。
適当に投げて浮きが波間に揺れている、光の反射でやや見辛いなサングラスが欲しくなる、キラキラ光る中でヒョコヒョコ顔を出す赤い浮きを見つめるが動きは波で揺れるくらいで食いついた気配は今のところ皆無だ。
ゴカイくらいなら探せば居るだろうしフナムシとかも居ると思うから生き餌に変えるのも可能なんだが探す手間がな、鶴子ならこんな有り合わせでも針を落とす深さやら潮目やらで釣ってくれそうだが形だけだとやはり厳しいかね、一応は数分で諦めて投げるポイントは変えているがやはり気配すらない、と言うか魚影も見えないから居ないって事は無いだろうが居るかも解らない、そもそも狙いとかも無いしな、アジだろうがカレイだろうが釣れるなら良しだ、例外はフグとかかね、調理免許とか持ってないとフグを食べるのは死にたいと言っているような物だし、他に食べる物も有るのだから多大なリスク背負ってギャンブルはしたくない、どうしても素人が食いたいならアレだ塩漬けしてから五年は糠漬けだな、ネズミか何かで実験して問題ないなら食える。
まぁ密造なんてしたらおそらく捕まりそうだが、法的にどうなっているのかとか不明だが少なくともチェックはしないとだろう、この島だと絶対に食べる事のできない物の一つだな……いや、持ち込めば食えるから現状ではか。
釣りをするフリを続けてはいるが釣るつもりは毛頭無い、と言うか釣れるとは思ってないから単に手持ちぶさたを解消するためだけに手製の釣竿を投げているだけだ。
もしかしたら釣り好き垂涎の好スポットなのかもだが無知というのは恐ろしく有難みなんぞ欠片もない、例え相手がお釈迦様だろうと弘法大師だろうと念仏は馬からしたら雑音なのと同じだ、知る者からしたらどれほど素晴らしかろうとも知らぬ者から見れば路傍の石と変わらない、その有り難みを説かれても石が漬け物石に変わる程度だろう。
墨巣さんと交代して風呂だ、 手早く服を脱いで川に浸かるが相変わらず砂利がいい感じに足つぼを刺激してくれるな、不健康なら呻いていただろうが幸いにしてこんな食生活でも健康らしく痛みはほぼ感じない、まぁ検査をキッチリしている訳ではないから気休めでしかないが。
そもそも足裏触ったくらいで病気が解るなら医者は要らないだろう、いやそれを取っ掛かりとして検査とか治療とかと考えれば案外馬鹿にできないか、まぁ医者からすると足裏触って痛かったからと来られても困りそうだが。




