振り返るには
風呂の時くらいしか髭を剃らないから毎日風呂という訳ではない生活だとどうしたって髭は延びる、永久脱毛でもしたならば違うのだろうが俺の場合はそういう治療は受けていない、面倒ではあるが剃るのは時間にして数分だしな、日々で積み重ねればアレだが、お金を払ってまでとなるとな、親父も専門外だしそもそも家族だからと無料で治療はしない、例外が有るとするなら捻挫とかかね、一応は受診するし湿布とか処方されるが家で軽いマッサージとかしてくれるからな、まぁ体育とかで足怪我して学校指定の形成外科行くと『なんで来たの?』って顔されるんだが、祖父によると接骨院とかでも同じらしい。
怪我の位置は足とは限らないし祖父の場合腰とかが多いのだがイメージ的に医者が息子で親父だとな、それもその道で名を知られているからギョッとされてしまう、親父も親父でおちおち捻挫とかできないからな、本当に幸運の一族なのかこの一点だけを見たなら疑問にしか思わないだろう。
夕飯を済ませたがようやく平時に戻ってきたな、明日には燻製が作れそうだが天候と漁果次第、物凄く運に左右されるのに幸運が発揮しきれない、物凄く謎だな。
まぁ飯にそれほど困らない時点で幸運なのだろう、サバイバルなんて初めてだしそもそも経験が有る奴が少ないと思うが本来ならここまで楽ではない筈だ、昇とかならと思うがアイツは山登り専門でサバイバルはちょっと異なるか、大自然に挑むならキッチリ用意してと言うのが奴の教えの一つだしな、入念に準備しないと山なんぞ登れないしそれが数千メートルならば準備は比例して増える。
さて翻って俺の場合はだ、1年のサバイバルで限られた予算での物品、なるほど自殺志願に近いな、裸一貫で放り出されるよりは恵まれているのだろうがやはり相当に無理をしたと言える、この1年を振り返るにはやや早いが振り替えれば無茶をしたものだ。
天候はやや曇り、体調はまぁ万全と普通の間くらい、やや普通よりだが問題は一切ない、後は漁果次第だがおそらく最後になる燻製作りだな、残りの日数的にもう一度のタイミングは難しい。
連続してなら話は別だが大量に作っても仕方がないしな、まぁ仮に今日が無理でも幸いにして1週間くらいは猶予が有る、曜日感覚がないから今週中かは知らないが少なくとも定期報告までに済ませれば良い。
ストレッチを済ませて特に気負う事もなく磯を目指す、ここで気合いを入れようが漁果は変わらないしな、残念ながら1年近く続けているのに磯に着くまで、なんなら着いてもその日の漁果は解らない、罠を引き上げる時でさえ微妙に重いかなとか思っても空とかザラだしな。




