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伝統

 とりあえず叢雲までは進めて後は花弁だがどちらにするかね、満月に影を落とすように切り抜くか、それとも満月から離れた所に一枚か、心象風景だと両方と言うか数枚が舞い散っているがそれを再現は不可能だ、少なくとも完全に切り抜く形での再現は無理だろう、物を中に浮かせるとかなら話は別だが生まれてから幸運と虫の知らせ以外で超能力的な物を持った事はない。

 それで十分と言うか相当に恵まれてはいるがおかげで変なのも寄ってくるし悪い面もどうしたって有る、幸運ゆえの不幸はおそらく初代から続く我が家の伝統だが手放せないし手放せたとして今日までで染み付いているからな慣れとかいう次元ではなく戸惑った挙げ句にノイローゼとかになるだろう。


 チマチマと削っての作業も一瞬の油断でまた台無しか、修正ができそうになく次へだな、考えるのも嫌と思いつつ何度目か解らないが道具が有ればと思ってしまう。

 ナイフ一本だとどうしても限界が有るからな、腕が上がれば話は別なのだろうし一本だからこその魅力や風合いも有るのだろうが正直に言えば今まで作った物は形にはなっているが売り物には数歩足りない、手間も技術も注ぎ込みはしたがこの出来映えでお金を貰うのは職人の端くれとして看過できない、それもまたプライドなのだろうがせめてもう1年か2年は修行してからだな。

腕を磨いて物にしないと俺の思う最低限のランクにすら届かない、残念ながら歴とかなんとか言いつつも形は作れてもそれ以上が無理だ、出来の悪いコピー品ですらない、ドライバーですと差し出されたのが粘土の塊のような物で例え焼き固めても使用に耐えない、せめて一度は使えないと三流コピーにすら劣る、今の作品は焼き固めてもいないから出来が悪いなんて次元じゃないな。


 もっと腕を磨いていけば小遣い稼ぎ程度にはなるかもだが時給換算だとどうだろう、置物だし名もない作家の作品ってのを加味してライト込みで5000円も取れれば御の字か、道具が揃っていても4時間は掛かるだろうから時給換算だと1250円か、しかし値下げしないと売れないとか材料費やら考えるともっと下がる、ライトとかサイズにも依るが格安でも100円は要るしな、これが師匠なら10000円でも安いと言われるからネームバリューって凄いよな。

 確かな物を確実に作るという信頼感が値段の要因でプラスして彫刻の精緻さやはたまた荒々しさ、その辺りが含まれて俺の倍どころかトリプルスコアですら安いという評価をされる、例えそれが師匠からしたらちょっと竹籠作るのに飽きたから気分転換にって感じで作った物でもだ、気合い入れてるのは同じなんだろうが技術的に隔絶しすぎて嫉妬すらさせてもらえない。

羨ましいとか妬ましいより凄いが先に立つのはそれが本物だからかね? 家系に恵まれたとか、コネに恵まれたとか単に運が良かったとかなら前の二つが勝つだろう、あるいは努力無しに才能だけでも勝つかもだ、しかし努力と才能に研鑽、艱難辛苦を舐めた事が見えるなら嫉妬するとしたら相当にひがみ根性が染み付いているか嫉妬深いか、或いは悪い面しか見ようとしないかだな。

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