圧倒的疲労
いつものように大量の魚を手に拠点に戻り、半分を捌いて干し、残りを放置して荷物を抱えてまた海に向かう。
リュックの中と手には切り出した竹と土鍋、流石に二回目ともなれば疲れがヤバい、元々が疲れで動くのが辛かったのに森の中を行き来してアップダウンを繰り返せば限界は近付く。
そろそろ膝から崩れ落ちそうだ、かなりヤバい、それこそ2日は寝込みたいレベルの疲労感が支配している。
予定を急遽切り上げ、荷物の一部を適当な木の根本に隠して引き返す。
疲れを意識した事で日々誤魔化してきた日常の疲れが顕在化したと思われるが、やはり多少の無理が響いているな、流石にコレでは休みながら作業とか生温い事は言っていられない。
今日と明日は完全無欠のオフにしよう、暇と戦う必要はあるが、肉体を回復させない事には何も進まないし、何もできない。
なんとか拠点まで戻り、一先ずテントの中で休む事にする、本来なら食事の時間だが火を起こす元気もない、食事を取らなければ元気も出ないが、理解していてやれないレベルの疲労感が限界を越えて体に蛇のように巻き付いている。
とりあえず寝転がって仮眠とは言わないが、目を閉じて大人しくしていよう。
一瞬のブラックアウトと覚醒、眠りに落ちて目覚めた感覚、ただし眠っていたというよりは寝転がりながら座禅を組んで無に近付いたと言った方が正しいな、ひたすらテントの入口から見える森を半眼で見詰めていただけだが、そこそこ回復できた。
とりあえずご飯にしよう、流石に空腹がピークだしな、疲れも取れた訳ではないが多少は動けるようになっている、また無理をする事になるが明日もこの後も休暇だ、回復はすぐにできる。
薪に火を灯し、串打ちした魚の半分を焼いていく、残りは鍋の中を泳がして今晩の夕食の材料にする、念のために生かして持って帰って正解だったな。
焼けた魚を食べながら、のんびりした気持ちで拠点を見渡す、視界にはテントと薪と森しかない殺風景とは言い難い賑やかな光景だ、なんでこんな所で魚食ってるんだろうという気分になるが、間違いなく疲れによる弱気とイジケ虫が出ているな。
このままだと電話でリタイヤ申請しそうだし、意識を切り替えて食事に集中しよう。
遅めの昼食を終えて、夕方までの時間はただ体を横たえて静かに佇む。
目は何かを見るでもなく半眼に開き、頭は何かを考えるでもなく平穏を謳歌し、体は自然体で脱力、このまま悟りの一つでも開いてしまえそうだが、煩悩と雑念は排しても混沌な思考は残っている、残念ながら仏の道は遠いだろう。
そもそも仏教徒でもないし、悟りを開いた所で霞を食べて生きていけるという訳でもないだろうし、そもそもこんな事をツラツラ考えている時点でダメだな。




