淡々と坦々と
お昼ご飯を食べ終え、少しばかり作業をしながら食休みを取る。
流れ着いた木の板を適度な長さに切り、熱湯をかけて消毒する、これでまな板完成である、非常に簡単だな、定期的に熱湯消毒すれば長く使えるし、木の板くらいならサイズを気にしないなら定期的に流れ着く、作り直すのは大した手間ではない。
ついで木の板を柱に結んで壁の範囲を広げつつ、目標は四方全てで2〜30センチ程の泥避け作りだな、それが終わったら床板張りとかになる、おそらくその前には新たな拠点に移る事になるだろうが。
さて、一通りの作業も済んだ事だし、また漂着物の整理といこうか、大量のゴミとの格闘だ。
虚しさや徒労感というのは仕事における敵である、とはバイト先の先輩の受け売りであるが、曰く今やっている仕事が例え意味がないとしても、またそれを知ったとしても、徒労感や虚しさに取り付かれるより、淡々と作業を続ければいい、その分だけ月末の給料が上がるから、とひどく拝金主義な事を言っていた。
当時はやりがいとかを求めていたから意味は解らなかったが、今に到って『なるほど』と手を打つ事ができる、例え意味がないような作業でも続ければ何かしらの恩恵はあるし、目の前の作業は片付いていく。
大量の漂着物の山の半分も進まないが、それでも木の板だとかロープだとかは手に入っているし、目の細かい網なんかは焼き干し煮干しを作る時に鳥や虫から魚を守れる、その他には薄い断熱材か何からしいマットや、釘が刺さったままの角材なんかが手に入る。
角材に関しては釘だけを頂戴する事になるが、それ以外は壁材に床に敷くマット、その他諸々のために活用していこう。
さて、そこそこの量が溜まってしまっているし、持ち込むには二往復は必要だろう、とりあえず今日はここまでとして明日に望みを繋ごう。
幸いと呼べるかは別として、まだまだ漂着物は山のように鎮座し存在している。
さて大量の荷物と言うか一見してゴミを拠点に運び込み、次なる作業として磯に向かう、整理や利用は明日の朝で良いだろう。
磯の様子は変わらず、何時ものように漁に移れる。
磯の中をアッチにコッチに歩き回りながら魚や蛸の影を確認して、水を抜いては魚を捕らえる、慣れた作業ではあるが下手を打つとエイを踏んづけて毒刺が足にぶっ刺さる事になる。転ぶ危険性も有るし足元は注意深く見なければならないだろう。
本日の成果は蛸が二匹と鰯が一匹、残念ながら蛸壺は空で、久々に振るった銛は空を切った、今は良しとしよう、これから先に上手くいく時が来る筈だ。




