よくあること
「さて、まずは植樹についてだが調べるだけ調べた、ただ信じるに足る情報は無かったな、だがある程度の伝聞として残ってはいたからそこから類推はできる」
「儂の親父が買うより以前に一部譲渡という形で官民一帯で島の開発に着手したらしい、だがお決まりと言うかなんと言うか談合に脱税の抜け道代わり、作るのは政府高官の保養所で天下り斡旋疑惑に失言である程度進んだ所で白紙撤回、その辺りで記念植樹をやった可能性は有る、後は親父が買った時に譲渡前だが記念に植えた可能性もあるが両方とも記録は残ってない、まぁ年代的には前者だろう」
完全に忘れていたがそう言えば有ったな立て札、いろいろと有りすぎてそんなのどうでも良くなっていた、結果がどうあれ経過がどうあれ今この瞬間に薪やら建材やらに役立つ以上、例え会った事もない曾祖父だろうが知りもしない会社だろうが関係ない。
だが竹林とかを鑑みるに保養所説は濃厚だな、和風な温泉宿と言うかそんなのを作ろうとしたと考えれば納得も行く、後はお決まりでゴルフとかかね、計画は潰えて再浮上もできない、何せ時代的には曾祖父の生きた半世紀前、けっこうな不況に喘いだ時代だしリゾートとして民間人も呼び込むなら兎も角として政府高官と家族、おそらくは接待相手とか後ろ暗い交渉相手くらいしか利用しない施設なんかに巨額を投じて良いと言う奴は居なかった筈だ、居ても建築関係とかくらいだな。
まぁ今となっては過去の遺物でしかないし少なくともテレビや学校でそんな話を聞かないから風化して消えたのだろう、嫌になる話だが似たような事は枚挙に暇がないし俺が覚えている限りでも数回だ、半世紀近く前を例には出さないだろう、それも完遂した訳でもなく途中で、建物の後や工事後、いや、港の後すら無いところから見るに最初期に潰えた物など一過性の話題にはなっても半世紀には届かない。
「さて、お次は墨巣さんに関してだがようやく法廷闘争に持ち込めて退路を塞ぐ事には成功したし余罪各種で起訴も見込める、年明けには判決で後は火消しに時間が掛かるくらいか、まぁ上告するだろうから二年くらいは長引くが新鮮味は薄れていく、残念ながら判決が確定したらまた再燃するが今よりはマシだろう、オリンピックの時期だしバカで下世話なマスコミくらいしか触れないしオリンピックが終わる頃には多少は風化しているだろう」
とりあえず墨巣さんに関しては一段落だろう、終わった訳ではないし問題自体はまだまだ熱を持っているが終息には近付いている、少なくとも向こうが攻勢に出るにしてもそれ以外の対処で手一杯だろうし、仮に攻勢に転じても余罪云々で信頼性が薄れるから片手間に潰せてしまう、後は収まるところに収まる筈だ、それ以降に関しては残念な事に一度終わるまでは解らない。




