禁煙
「あぁ健太か、込み入ってて忙しかったからな、ついこの間報告が終わったばかりでまだ少し先と思ってたんだが、そうか、そんな時期か」
等と勝手に一人で納得しているがその声にハリが無い事から察するに忙しかったというのは事実で、それも三面六臂の活躍でも足りないくらいの忙しさだったらしい。
「とりあえず、こっちの報告としてはこの間の、まぁもう連絡は行っているんだろうけど謎の漁船、後はこの一月は動物の気配が消えたって事くらいだな」
「要請としては件の漁船が姿を見せてないからどうなったのか、ある程度で良いから聞きたいのと、それに補給品なんだがタバコは入れなくて良いって事だな」
「代わりにコーヒーとメモ帳でもと思うが別に叶えなくても良い、ただまぁメモ帳はやっぱり欲しいかな」
流石に一息では言い切れずに何度も息継ぎしつつ言葉を詰まらせて、言葉を選びながら告げる、とりあえず今回の報告で言わないといけないのはこれくらいだったようにも思うが何分メモ帳が無いからな、間違いなく幾つかは忘れてしまっている。
「ようやく禁煙という言葉を辞書に刻んだのか、あれは一利は有るかも知れないが百害が酷い、止めて正解だ」
と返事は何故か、いや医者だし当然か、親父らしいな、と言うか確か出張とか聞いたが戻ってたんだな、長期治療でないなら当然だが何時ものパターンなら済し崩し的に全国飛び回るんだが今回は違ったらしい。
「メモ帳なぁ、まぁよかろうボールペンと一緒に容れておいてやろう、どうせ次の支給は少しばかり趣向が異なるしインスタントで良いならコーヒーを容れるのも考えよう、まぁ期待しておくといい」
珍しく素直にこちらの要求を飲んでいる辺り条件の擦り合わせも面倒なくらいには疲弊しているらしい。
ただまぁそこまで酷くはない筈だ、少なくとも人死にレベルなら虫の報せが発動するだろうし血縁となれば尚更だ、だが問題としてこちらにも関係してくる可能性は大いに有るし話を聞くだけでゲンナリ疲れるような内容なのはほぼ間違いないだろう。
「さて、そちらの報告も願いも聞いたし次はこちらの番だ、言ったように込み入っているし何より救いようもない」
前置きからして嫌だが内容を聞かない限り安心できないだろうからガチャ切りする訳にも行かずに黙って見守るしか選択肢がないのが残念だな。




