報告11月
寒さの中で凍えながらも漁を済ませて拠点に戻る、このまま焚き火で体を暖めたいという欲求をなんとか飲み込んで作業に移る、粗加工は粗方済んでいるし後は割って運ぶだけだ、実際に使うのはかなり先にはなるだろうが乾燥具合を考えると妥当だろう。
ただ太さが太さだからな、運ぶのも加工するのも骨が折れそうだが進めないと進まない、少しずつでも前に向かって歩かないと千里の道を踏破なんてできる筈もない、残念ながらタクシーも籠屋も無いからな。
ワープ装置も無ければエレベーターエスカレーターも無い、自分の足しか頼れないがそれが当たり前の時代だって有ったんだやってやれない事なんてない。
ひたすら割って割ってお昼休憩を挟んでひたすら割っても終わりが見えない、太い分だけ適度なサイズにするのが面倒で手間も掛かる、四分の一と六分の一では作業行程が二つも増えるからな、その分だけ時間も必要になるし体力だって消耗する。
だが、それと比例して薪の量も増えていく、すでに運んだ分で有り余ると言って良いレベルだろうし残った分を合わせれば薪干場のキャパシティを越えるかもしれない。
まぁオーバーしても問題ないだろう、近場に運んでおいてスペースが出来てから入れても良いのだし、どうせ使うのは半月から一月は先になる。
サクサクと漁を済ましてタコ飯にウツボの潮煮、焼魚と刺身で腹を満たす、今晩は一月に一度の報告日でこの数日焦らされてきたマスコミ対策についてだ、しっかり食べておかないと持ちそうにない。
下手をしたら漁とかより意識を切り替えないといけないしな、備えも気構えもしっかりとだ。
四回のコールの後に何者かが電話を取った、とりあえず先輩でないなら誰でも良いが叶うなら家族の誰かであって欲しいな。
「はい、もしもし高田です」
どうやらお袋が応対したらしくとりあえず一安心だ、先輩は言わずもがな狸爺に比べればかなり穏便に済む、次点で親父だがその差はほぼなく以降がブッチギリで突っ走っている。
先輩に関してはレーンを外れて競技場の外だが願わくばそのまま県外、国外、地球外くらいまでは行ってほしい、それこそあの人なら外宇宙でも問題なく過ごせそうだが流石にそこまでは望まない、会いたいとは思わないが会えないと寂しくないか、普通にしている分には話せば楽しいし相当に世話にもなっているが普通にできないからな。
「健太だけど」
と一言で済ませる、どうせ後で話す事にはなるのだし挨拶に時間を割くのも面倒だ、少々と言わずに無礼だし親不孝だが後者はこんな所に居る時点で今さらだろう。




