熱線
昼食でお腹を満たして少しばかり休む、まぁ薪が勿体無いし着火作業が面倒だから料理に使った火が消える前には作業開始なのだが、それでも30分くらいは休めるだろう。
その間は道具を準備したりして過ごすかね、休んでないと言われればそうかもだが大した作業じゃないしな、暇つぶし程度にはちょうど良い。
幾つか必要な物を準備してそこから残り火に当たりながらのんびりと過ごす、今日は暖かいとは思うがそろそろ寒さも無視できない、それでも朝方の最も冷え込む時間帯で二桁に届かないくらいだろう気温だからマシだな。
地元ならこの時期はマイナスか一桁前半、最高気温でさえ二桁になるかどうかだからな、霜を見ない十一月なんて初めてかもしれない。
この調子なら年末も暖かく過ごせるかもだが暖房器具は焚き火だけだからな、残念ながら寒さは友にしないと過ごせそうにもない。
そのためにも薪を用意中だし耐える事も越える事も覚悟と準備ができているならなんとかはなるだろう。
さて、そろそろ作業に移るとしようか、とりあえず薪を足して少しばかり火力と維持時間をプラスするとしよう。
曲げた枝に取り付けたワイヤーソーに濡らした布を巻き付けて焚き火でワイヤーを炙る、電気使った熱線と違って何度も炙りながら少しずつ削るしか無いから時間が掛かるな。
赤くなるまで熱する必要はないだろうが水に着けたらジュッというくらいの温度にはする必要がある。
後は火傷と延焼にだけ気を付けて作業開始だ、俺の方はそれで良いとして墨巣さんにはフロートを押さえて貰いつつ片付けを任せるのがベターかね。
少しずつ削って全体のバランスを見つつ形を作っていく、一抱えの球体フロートをとりあえず地面に置けるように底を作り側面を切り取って高さを調整ったのが流れとしては妥当だろう、とりあえず側面を一ヶ所落とせば座るのには問題無いからそこまで進めてしまうとしよう。
チマチマと確実に切り進めて行くが一気には進まない、定期的に火で炙る必要があるし布にしたって湿ってないと燃えるからな、簡単には乾かないにしても念には念を入れたいし何より熱い、遠い分には温かいが近付けば身を焦がすのが火だからな。
料理をする身として長年の鍛錬と言うか 常態化した日常の中で火傷には慣れているし熱さにも慣れているが料理の時でもここまで近付かない。
何より火力がな、温度的にはガスコンロの方が高いだろうが炎の量や勢いは焚き火が勝る、何よりコンロのソレと違って規則性なんてないからな、爆ぜもすれば急に大きくもなるし火の粉だって飛ぶ、半年使ってきても動きを予測なんでできる筈もない。




