一ヶ月
新しい朝は1年を通して毎日やってくる、それこそ地球が生まれてから今まで、そして大陽か地球のどちらかが死ぬその日まで、人類が滅ぼうと生物が滅ぼうと、必ずやってくる。
さて、壮大な感想を一つ告げたところで意味はないのだが、今日は記念すべき日でもある、指折り数えて待ちに待った日だ、それこそクリスマスを待つ子供より待ち望んだ日と言える。
俺の日数感覚が間違っていなければ今日は5月11日、この島に上陸して1ヶ月になる記念日だ。
まぁ記念日と言っても何もない日常でしかなく、特別な1日にはなりえないのだが、ご馳走を作ろうにも材料はタンポポと魚くらいだ、調味料もないし残念さ極まる宴にしかならない。
さて本日も漁の時間だ、とは言え、昨日と同じ轍を踏むのは嫌だし、薪のチェックだな。
濡れた物や湿気った物はありがたい事にない、細い木の枝や薪も乾燥していて問題なく使える筈だ。
さて確認も済んだ事だし、磯に向かうとしよう、今日も大漁を願いながらの道のりを進み、水をひたすら掻き出す作業を楽しむとしよう。
単に楽しまないとやってられないという面も有るだけという気がするが、まぁそこは気にしない方向で行こう、考えてしまったから意味がない気もするが。
さて本日も数十リットルという大量の水を掻き出してようやく狩りができる、ウヨウヨとした大量の魚が自然の水槽の中で泳いでいる、後は掬い上げて選別して持ち帰るだけ、簡単な作業だ。
まぁそこまでの工程がえぐいくらい大変と言うだけの事だ、長いホースでも有ればサイフォン使って楽をできるのだが、残念ながら漂着物は前の拠点まで戻らないと探せないし、この辺りを探索するのは一月は先になる、さて予定を変更するべきか。
優先事項はどちらだ、薪を保存する倉庫か、それとも食料確保のために動くか。
まずは目の前にある後者から行こう。恒常的な食料の確保は急務にして命題と言える、体調、天候、状況を気にしない方法が有るなら欲しいし、この地形とサイフォンの定理を利用した水抜き法は綺麗に嵌まる、全てを抜くのは不可能だが少なくとも漁ができる程度には抜けるし、最終的には手動による掻き出しを使えば良い。
前者は食料を調理し、体を暖めるための薪を確保するための物になる、この一月で雨が降ったの二回、だがもう5月だ、確実に増えていき8月9月の台風には絶望的な結果が待つ事だろう。
しかし、さてどう見る、先を見据えろ、予測しろ予想しろ、可能性を網羅し、最悪と最高の狭間を行き来しろ。
考えろ、考えろ、後者の最悪はホースが簡単に手に入らず時間を無為に過ごす、前者の最悪は台風が予想以上に強かった場合、テキトーに作っただけの倉庫が容易に吹き飛ばされる事だろう、釘も無いしコンクリートも無い、蔦やロープで結んだだけの建物等いくら森の中で風が軽減されるとは言えそこまでの耐久性は見込めない。




