英断
とりあえず短いものを針に通し、仮で紐と繋げてバケツに沈める、ユラユラと動かして見るが動きが悪いな、もう少し尻尾が長い方がピラピラと動いて魚を誘いそうだ、これはボツだな。
かと言って長すぎると怪しすぎるしな、適度そうなサイズとなるとこの辺りかね。
試してみるが動きが固いな、もう少し柔らかいゴムの方が良さそうだ、となると赤いのは全部ダメか、とりあえずこれを基準に幾つか試してみるかね。
オレンジに緑に黒に白、色とりどりのゴムの何かを試しつつ適度に柔らかく動くオレンジの物に決める、このまま量産したいところだが先に飯だな。
焼き魚のみの昼食を食べ終えて続きを開始だ、拾った物をメインにルアーをバラして新しいルアーを付けていく、魚のルアーからワームに変わるし磯ならそこそこ効果が有りそうだ、まぁ竿がアレだから極端に釣果が上がるとは思えないが少しはマシになりそうだな。
とりあえず一通りは準備できたし捕られても予備はソコソコ有る、まぁそんな大物となると磯ならスズキかウツボ辺りかね、或いは横取りしに来たサメとかか、今の竿では間違いなく対処は不可能だろう、木の枝や竹では流石に粘りが無さすぎる、リールも無いから魚とのバトルも難しいしな。
釣り竿が流れてくる事が有っても基本的に折れていたりバラバラだったりだしな、鶴子なら使えるパーツを使って竿を作る事も可能だろうが俺には無理だ、ロープワークとして釣糸を付けたりはできても釣具に関する知識は無い、鶴子は魚を持ってくる事は有ったし自慢もしてきたが釣具に関する知識を披露してきた事は無かったからな、今になって思えば聞き流すでも良いから聞いておけば良かった、それに俺の家の風呂でルアーとか洗っているのを観察するべきだったな。
人の家で何してくれてるんだよとしか思って無かった自分を殴りたいがやはり人の家で何してくれてるんだよと言いたいな、と言うか今さらでアレだが鶴子に望に先輩に年頃の娘が男の一人暮らしの家に来るって中々にリスキーな事やってるよな、それだけ俺に信頼が有るって事なんだろうが、いや先輩の場合は少し違うか。
早速とばかりに試してみたいのはやまやまだが夕まづめまではまだ時間が有るしそもそもその時間は漁の時間だ、だから釣れなかったのかとも思うが違うのだろうな。
前にバイトしてたコンビニの店長とか深夜に働いて朝から昼まで寝て昼から車飛ばして釣りに行き帰って風呂入って夜には深夜番に入るという頼まれてもやりたくない一日を三日ぶっ通しとかやって『今日は爆釣だった』とか朗らかに言える猛者だったからな、昼から夕方手前までで爆釣なら単純に運と腕だろう。
鶴子に紹介しようとも思ったが釣りバカが増えても困るしあのままならふぐ調理の免許とか取りそうな勢いだったからな、英断だったと言える。




