防御と攻撃
「さて、結論から言うが怪しい船を見かけた、今のところ位置的に上陸は無理だし望遠レンズ使っても海辺に居た俺を写すのがやっとって感じだろうな、ただ焚き火の煙は間違いなく見えているだろう」
火の無い所に煙は立たないとは言うが現実的な意味で起こるってのは中々にレアアースだろうな、あの船に乗っている連中からしたら俺たちが、少なくとも俺という個人がこの島に居るという間違いのない、紛れもない証拠となる。
彼らがどんな情報で現れたのかにもよるがパターンとしては四つ、一つは俺一人が無人島生活っていうある意味で人身御供な行為に対して、一つは墨巣さん、まぁこれが本命だろう、一つはスマイリー、これは対抗だな、最後は全部又は複数合わせたパターン、どれにしても俺の人身御供パターンは大穴も大穴、もしかしたら知られてすらいないかもな。
「とりあえず対策は既に打ったから後は待ちだな、残念ながら手出しできないし仮にしたとしても問題が拗れるだけで向こうが喜ぶだけだ、幸いにして向こうが把握できたのは竈の煙ともしかしたら俺の姿くらい、何をどう頑張っても墨巣さんが見えた筈はないから救いが有るならソコだけだな」
おそらく彼らにとって最も重要で大事で手に入れたいのは墨巣さんの写真だろうからな、まぁ撮れなかったら撮れないで何度も来そうだがスクープを許さないというのは最大防衛目標であると同時に相手に対する攻撃手段とも言える。
一度なら偶然でも二度目は偶然と呼ぶには少々と言わずに引っ掛かる物がある、三度目ともなれば意図的と言って良い、仮に全てが別人でも依頼者が同じなら当然ながら監視の目は向く、まぁあちらとしては向いたところで気にも止めないだろうが。
困った事に蜥蜴の尻尾は掃いて捨てる程持っているだろう、ひたすら持久戦と言うかイタチゴッコを繰り返すしかない、上が同じかは別にして切る捨てて困らない人材はソレなりに持っているだろうし他にも個人として動く連中も居る、流石に一線級を向かわせたりはしないにしても二流三流は使い潰して来るだろう。
その総数はおそらく四桁を越えてくる、全員が島に来るとは限らないが一割でも三桁、下手をしたら船が大挙として押し寄せるなんて光景だって見ることになるかもしれない、そのまま百人単位が上陸とか低予算戦争映画のワンシーンの如くだろうな、武器の代わりにカメラだから全くもって締まらないが。
だがその威力は下手な拳銃より恐ろしい、拳銃は撃たれたら痛いか死ぬかで相当に運が悪くなければ後遺症はほとんど出ないし出ても無視できるレベルだったりする、だがマスコミという兵士の使う情報という武器は長引く、それこそ虚実を問わず75日なんかでは終わらない、実際問題として我が家はこの数世紀彼らと敵対したり手を取り合ったりしつつ長々と関係を続けているが数十年前の事とか普通に蒸し返してくるからな。




