補修
努めて何時ものように漁を済ませて何時ものように夕飯を済まして何時ものようにテントに潜り込んで何時ものように寝袋に体を納める、これもまた現実逃避でしかないし呆然としていた間にできた事も有ったが心の平穏のために必要な時間だった。
少なくとも現実を直視するには余裕がなく何より作業に没頭しようものならそのまま作業だけに従事して本質を失いそうだ。
だから必要な時間だったと思う、あるいは思い込もう、もしかしたら後悔するかもだが先に立たずだ、悔いるのは明日からで良い。
目覚めと共にあぁ今から現実との戦いで積み重なった問題の処理と整理の日々だ、今までの予定を全て捨て置いて安全や安心のための作業に集中する必要がある。
とまれ、何時ものようにストレッチやらを済ませて漁に向かう、何を始めるにしても先ずは食料の確保からだ、最低限腹を満たすという安心感がないと作業は全く捗らない、間違いなく心配で手が鈍る。
ハゼと鰯が大量だな、幸先は良いが嬉しくはない、仮にタイやヒラメにカレイにウナギが捕れても喜べなかっただろうな、その程度ではちょっと喜べないくらいに状況は込み入っている。
内容が内容過ぎてどうしようもない、もはや地獄のように問題が累積していっそ笑えてくる。
拠点に戻り準備を済ましたところで一気に動き出す、ただ残念ながら一つ一つ片付けていくしかない、とりあえず片付ける問題として警戒網のチェックだ、何かが壊れているかそれとも音が届かないのか、もしくは跨いだのか、まぁ外側の警戒網に関しては間違いなく鳴っても聞こえないが用途としては此方に近付いた事を教える事と驚かせて逃げてもらう事の二つの意味が有るからな、最悪聞こえなくても問題ないと言えば問題はない。
ただ昨日の熊とスマイリーは全くパニックになっていない、物凄く落ち着いた状態だった、流石に鳴子がガラガラ鳴れば多少は驚いてパニックになるはずだから考えられるのは鳴らなかったか跨いだかの二拓となる。
さて、熊はこの方向から来てこの方向に去っていったがどうなっているのかね。
ロープがピンと張っていないせいで鳴子が地面に触れているがさて何時からこうなっている、とりあえず触ってみるが鳴るは鳴るが音が小さく何より籠っている、ロープを揺らしてみてもこれでは意味がないな、とりあえず張り直すとして問題は熊やスマイリーが踏んづけてこうなったのか、それともずっと前からこうだったのか、まぁそれはどちらでも、いや解りえないのだからどうでも良い。
とりあえずロープを張り直してチェックしてみる、ついでにグルリと一周して確認しないとだな。




