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想定上の最悪

 気持ちの良い朝には程遠いな、やや体が固く、何より鈍痛が頭を支配して熱っぽい、鼻が詰まって呼吸が苦しくて仕方がない。

 コレはアレだな、論じるまでもなく風邪だな、もしくは最悪な事にインフルにでも罹患したか、どちらにしても動けなくはないが動けそうにない、多少の無理をすれば動けるだろうがそのための体力を呼び出す気力すら持っていかれている。

どうやら今日は、いや明日もか、極力動く事なく大人しくした方が良いらしい、早く回復しないと薬もない現状だと無理して悪化したら目も当てられない。

幸いにして俺一人でないというのがプラスだな、まぁ墨巣さんも風邪で倒れてなければだが、少なくとも一人で居たならかなりヤバかっただろう、食料は兎も角として精神的な余裕が生まれる筈もない。


 幸いにして咳が出ないしくしゃみもないから楽ではあるが体温は38度近いと思われる、無理が祟ったかそれともこの間の寒さにやられたのか、或いは昨日の夜でか、答えは出ないがこの島に来てから初めての、来る前に最も恐れていた事態の内の一つが起こっている。

 いやはや困った、普段なら病院行くか薬でも飲んで暖かくしてウドンでも食って寝れば2日でほぼ完治だがこの状況だと全く先が読めない、これ以上の悪化は無いと信じたいがどちらにしてもどうしようもない。

寝袋に入って水を飲みつつ魚食って寝るくらいしか打開策がないからな、薬なんてないし薬草とか生えていたとしても俺は動けず墨巣さんに任せればレアな毒物が並びそうだ、何かしらできるとしても水で濡らしたタオルを搾って頭に乗せるくらいだな。


 テントから出てこない俺を異常と判断したらしく外で30分程ゴソゴソやっていた墨巣さんがようやく声をかけてきた、ただ申し訳ない事にそれに返事をする事はできるが出るのはおそらくか細い声で聞こえないだろうな。

 ならば無駄に体力を消耗しないようにもう少し近付いて来てくれるのを待つのが吉だろう、とは言え一つだけ幸いなのは墨巣さんの声や様子から彼女の体調はすこぶる健康らしいって点だ、コレで彼女も倒れていたなら目も当てられない。


「あぁ起きてるけど起き上がれそうにない」

 『えっと、起きてる?』というテントのすぐ前で聞こえてきた声に出来る限りの声で返事をする、物凄い鼻声だし頑張った割には弱々しいな、体調は最悪ではないにしても通常には程遠いらしい、コレで喉がやられていたなら、或いは意識が朦朧とするくらいに熱に支配されていたならリタイヤの四文字が頭を掠めて、そして墨巣さんが無理と判断したならそのように動いただろう。

だから最悪ではない、俺の体調は兎も角として墨巣さんがこの島から出るための条件も条件も揃っていない現状で風邪なんていうありふれた病で前提を台無しにして彼女の人生を狂わせる事を考えればこの程度はまだまだ軽い。

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