本格製造
夕飯を終えてのんびり気分だ、薄曇の向こうに居るまるで糸のように細い月から察するに明日は新月か、ようやくお楽しみの日がやって来るわけだが天候に恵まれれば良いな、少なくとも今日のような薄曇か、チラホラレベルなら天体観測は可能だが分厚い雲となると不可能だ、かと言って雲一つ無いとなると寒くなるからそれはそれで問題だ。
まぁジャケットをキッチリ着込めば多少は寒さも紛れるだろうが寝る時に苦労しそうだよな、下手に眠りが浅いと夜更しも相まって翌日は地獄を見ることになる、無理もできないしちょうど良いバランスで晴れてくれればと切に願うばかりだ。
起きた瞬間に寝過ごしたと理解する、まぁ外のゴソゴソ音がスマイリーの物なら何時も通りだろうがそれにしては足音が軽い、間違いなく墨巣さんだな。
ゴソゴソと寝袋から這い出てテントの入り口を開けて靴を履く、軽く伸びをして水筒に残った水でうがいをして体を捻りながらテントから離れる、やはりと言うか墨巣さんだな、何時もより30分は寝坊したらしいから急ぎ足で準備を済ませるとしよう。
川に向かい顔を洗って頭と目をシャッキリさせつつ水筒に水を補充して拠点に戻り、何時ものようにストレッチと親父体操を済まして装備を整える、幸いにしてまだ余裕は有るが早足で磯に向かうとしよう。
テキパキと竹筒を引き上げて中身を確認する、タコが一匹か、最近二匹捕れる事が少なくなった気がするのだがとうとう竹筒フィーバーも終わりって事なのかね、だとしたら物凄く残念だし困った事になるのだが。
食事から一品減るという以上に多様性から外れるってのは全くもって嬉しくない、特にタコの食感は箸休めやなんかに物凄く良い、少なくとも魚オンリーよりは箸が進むし食欲も湧いてくる、これから先魚オンリーだとかゾッとするし想像なんかしたくない、物凄く贅沢を言っているのは解っているが贅沢を覚えた身としては下げたくない。
もしかしたら杞憂かもしれないが、それでもその日が来たならまた心を折られるかもな。
さて昨日の続きだ、まずは大量のイワシを捌いて下準備、塩を適量振り掛けてスモーカーの中に限界まで吊るしていく、ある程度隙間が無いとダメだから量が作れないのがネックだがそれでも二桁は吊るせるしロープを使って上下差を作れば燻製だけで腹半分くらいはなんとかなる、まぁ流石に面倒だからやらないのだが。
とりあえず焼き干しオンリーから少しだけ風味が異なる物が加わる、燻製をオカズに焼き干しを食べる的な使い方で良いだろう、後はどの程度日持ちするかの実験だが気象状況によるだろうし匂いも誤魔化されそうだ、見た目に変化がないという前提で一週間以内くらいかね。




