暖を取る
体が暖まり脳がようやくまともに機能した所で手早くストレッチやらを済まして漁に向かうとするか、焚き火の方は燻った状態だが薪を足して空気を送ればという状態で放置して戻ったらすぐにでも暖を取れるようにしておく。
本来なら延焼とか気にするべきなんだが燃え移るようなものは回りに無いし、いや、大事をとって交代で漁に出た方が無難だろう、リスクは可能な限り最小限に抑えないとだ。
とりあえず時間的に限度が有る俺から済ませるとしようかね。
幸いにして海は荒れてはいない、これで波が高くて水煙を浴びるようなら漁を行うのは大変を通り越して危険だが穏やかだし問題なくだな、ただ遮る物がないから風の冷たさが増している、ジャケット着て来るべきだったな。
取りに戻ろうかとも思ったが無駄だろう、どちらにしてもある程度は濡れるし今さら上着を着たくらいで大差はない、ただまぁ墨巣さんと交代の時に言ってあげるとしようかね。
タコとゴンスイか、量としては物足りないが順調に回復はしているな、まぁもうしばらくは我慢続きだろう。
墨巣さんにジャケットを着ていくように言って火の番を交代する、若干以上に冷えた体にチリチリと燃える焚き火が暖かい、まぁ火は出ていないのだが。
炭が燃えるように煌々と光ながら、ジックリじんわりと燃えていくこの状態が焚き火の中で一番好きかもしれない、炎が無いのに温かく、お湯も沸かせるし調理も可能、薪を足して空気を送ればすぐにでも燃え盛り、放置していると少しずつ灰になっていく幼い頃に祖父に連れられてキャンプをした時に何か言っていたが思い出せないな。と言うか多趣味と言うかアウトドア派なんだよなあの人、登山にキャンプ、食べ歩きに温泉巡り、ツーリングもやっていたらしいし根っからのアウトドア人間なんだろう。
戻ってきた墨巣さんの手には見事なクロダイがグッタリと下げられている、まぁあれだけ見ていたら野絞めをマスターしていてもおかしくはないか、なんなら生け絞めもマスターしてもらうとするかね。
二人して体を温めて時間が過ぎるのに任せている、作業はどうしたと問われればそんなものは無理だと答える、正直に言って雪が降りだしそうなくらい、池が凍るかもしれないくらいに寒いんだ、指が悴んで細かな作業なんてできそうにない。
と言うか焚き火の側から可能な限り動きたくない、まるで炬燵のような吸引力が俺を掴んで離さずこの場に縛り付けていた。
なんとか気合いを入れて移動はしたが薪の補充のためという完全なダラケモード、もう休暇と割りきってノンビリするとしようか、日が登っても寒いままだし休みは必要だし。




