ドングリ
少しばかり掘れたが柱を埋めるにはやや足りないってところで時間切れか、流石に準備やら帰還やらで時間を取られたな、まぁおかげで無駄な部分も見えたし明日はもう少し効率的に動けるだろう。
少なくとも数分は無駄なく動けるようになる、まぁほんの数分だからほとんど誤差に近いがやや足りないから建てるには申し分無いくらいにはなるし馬鹿にできない差になるだろう。
漁を済まして墨巣さんの突いた大きなアジとタコとウツボを手にする、ウツボは久しぶりって感じだが何にしようかね。
蒲焼きと刺身にタコの炒め、相変わらずの魚介祭りだがまだドングリに手を出す気分になれない、と言うか仮に明日拾い集めても下処理等で食べるのは3日か4日、下手をすると1週間は先の事になる、今すぐにというのは不可能だ。
それに何より残念ながらドングリを拾い集めている時間がない、そうこうしている間に時期を逃すかもしれないし貴重な栄養を失うかもだがそこまでして食べたい物でも無いってのが最大の理由だろうな、これが例えばほうれん草だとかトマトだとかナッツとかなら予定を変えて行動するだろうがドングリだしな、どれだけ栄養的に必要でも味的には物凄く食べたくなるような物ではなくやる気が湧いてこない、おそらく時期を外したところで全くと言って良いくらいに残念に思わないだろうくらいには些事だ。
何時ものようにルーティーンをこなす朝は何度目になるのかも解らず何時から始めたのか、あぁ、親父のストレッチは墨巣さんが来てからだったか、いやその前からしていたか? 墨巣さんが流れ着いてもう4ヶ月を越えている、彼女は1年の三分の一をここで過ごした事になるわけだがその倍過ごしている俺が健康体って事は少なくとも病気からは若干遠ざかっていると考えて良いのかね? まぁどちらにしても戻れば精密検査とか受けるんだろうが数値がかなり乱高下していそうで恐ろしいな。
まぁそれは半年先と逃避して目の前の昼飯問題を片付けるとしよう、嘆こうが喚こうがどうしようもない半年先の未来より足掻けばどうにかなるかもしれない数分先の未来が今は大事だ。
ハゼ多めだな、と言うか本当にハゼ続きだな、多少の途切れはあるがハゼが食卓に居ない週は無いくらいに続いている、まぁ美味しいから良いのだがそろそろ生態系とか心配になってくるぞ。
墨巣さんはメジナか、時期的に臭いよな、残念ながらもう少し先にならないと食べられない、仮に生姜や梅が有っても調理が難しいし竹筒に入れて餌にするとしようか。
せっかくの大物が勿体ない気もするが大物故に全ての竹筒に切り身として入れても余りある、念のために一部を口にしてみたが臭くて食べるのは遠慮したい、魚ばかりの食卓で魚が苦手になるような事になったらもうお終いだ、手早く口を濯いで何も無かった事として忘れよう。




