ジャングル
朝の狩りと薪割りやら薪から木の皮を剥ぐ作業を済まし、食事を終え、歯を磨いてトイレを済まし、ブーツの紐を固く結び直して荷物を入念にチェックする。
さてさて未踏破区域への侵入だ、慎重に慎重を重ねて行こう、どんな困難が待っているか解らないぞ。
さておき、森の中を川を目線に入れつつ進む、とりあえずの目的は川の水源、もしくは拠点として向く場所だ、今の仮拠点でも問題はないのだが、なんとなく森の奥の方が良いし、何より水源に近い方が水を扱う上で有効だ。
当たり前だが水を飲むのは俺だけじゃないし使うのも俺だけじゃない、下流になればなるほど砂やら動物の毛やら下手をすると糞尿も混ざる可能性が高い、いくら俺の使っている浄水器が優秀な品でゴミから雑菌まで取り除く逸品で飲むのに問題はないとは言え、気分的に良いものではない。
贅沢を言える状況ではないし、どうせ浄化するのは確定だが、やはり綺麗な水の方が良い。
岩場は少なく、土や腐葉土の森が続く、それに若干だが昇りだな、まぁ川の流れを昇る訳だから当たり前だが。
森の様相としては相変わらずの樫系が主で蔦やら宿り木やらが多少は見える、上はかなり鬱蒼としており年を経た森といった感が有る、前の拠点からなら多少は山肌が見えたがこの森は見えない事の方が多い。
そのため目視での位置把握が難しく、コンパスと木の幹を傷付けるマーキングが命綱となる。
森の中を歩くのは元々得意な部類に入るが、残念ながら裏山の森は整備された里山だった、島に来てからは鬱蒼とした原生の森林に苦戦しつつ馴染んだ筈だった。
だがもはやジャングルとしか思えない森を相手にした場合、今までの経験とか築いた自信とかが通用しない、目的もなく森を歩く場合は基本的にマーキングと多少の枝を払う以外は木を傷付けないようにしながら歩いていたのだが、今回はそんな事を考えていたら進めない、正直に言って鬱陶しいくらいに蔦やら木の枝やらが邪魔になって仕方がない。
とりあえず川の上流を目指して進んで居たが、水の音が少しずつ変わっている、流れるザブザブとした音から河原や池のチャプチャプとした波打ち際の音が混じりだしている、どうやら開けた場所が近いらしい。
とは言え、そろそろ時間がない、狩りに掛かる時間は今まで以上だしそろそろ戻ろう、探索の続きは明日だな。
行きは怖いが帰りはヨイヨイ、これでは童歌とは真逆だな、2時間掛かりの道筋が急ぎ足とは言え30分足らず、やはり自然の脅威というか壁は凄まじい。




