雨煙
お昼ご飯を済ませて、交代しつつ穴を空けて三つ目の途中でワイヤーソーが天に召された、後はもう力でなんとかするしかないな。
釘を打ち込みミシン目を作って無理矢理穴を空けるしか方法がないが叩く毎に一斗缶が歪む、少しずつ少しずつ頑張るしかないが大量に体力を消耗するな。
このなんとも言えない徒労感と疲労は多量の汗と共に体力も精神力もゴリゴリ削ってくる、久々だなこの感覚。
夕方まで頑張ってなんとか三つ目の穴も空いたが物凄く疲れた、疲労レベルがヤバそうだが明日は大丈夫なのかね、正直に言って現時点でかなり厳しいのだが。
とりあえず夕飯の確保のために漁に向かい大量のガシラを手に入れる、墨巣さんがボウズだが大きい物も居るし十分だな、から揚げと焼きで美味しく戴くとしよう。
雨か、それもそこそこ強めだな、と言っても爆撃のような豪雨ではないが傘は欲しくなる程度には強い、どうやらここに来て動けないらしいがタイミングはバッチリだな、何せ筋肉痛で動きたくないし。
休暇の名目としては十分でこの隙に体を回復させるとしよう。
テントの中でダラダラと過ごしながら雨音をBGMに跳ね返る雨煙で幻想的な森を見るでもなく見ながらボーッと葉っぱの数を数える、と言うか紅葉していても落葉してないな、そういう種類というだけなのだろうがドングリも見えているのに葉が色付かず落葉しないのは不思議だが裏山にある木とは違っていて当然だ、確か裏山はナラとブナが大半だったか、それに杉が少し、この島だとカシが多いからその関係かね、確か落葉樹と常緑樹だったか、多年草だの一年草だのと植物は植物でややこしい、ある程度の目利きはできるし葉や花の色形で判別はできるが大きく括ってその仲間としか言えないからな、生体まで断言できる筈もない。
しかしドングリはありがたいか、アク抜きに1週間は掛かるし物凄く美味しくて好んで食べるようなものでもないが貴重な食べられる植物だ、栄養価は知らないが魚だらけよりはマシになるだろう。
種類によるが割って水に浸けて1週間程度、後は茹でてみてだな、最悪水を換えながら茹で続ける必要もあるが若干の渋みはアクセントにもなる、まぁ好んで食べる物ではないしドングリを拾って処理するよりアケビとか山葡萄食った方が早いし旨いんだが。
と言うか今更だが俺って御曹司とか呼ばれる存在だと思うのだが何故に野山を走り回って山葡萄とか食ってたんだろうな、でも美味しいんだよな、クセになると言うかなんと言うか、野苺ジャムにしたりして楽しんでいたが普通に考えてスーパーでリンゴとか買ってきた方が楽なのに。




