留守番
「はいもしもし高田です」
おいマジかよ、なんで居やがる、数カ月は大人しくしていると思ったのにニマニマ笑いが浮かびそうな声で馬鹿が出やがった。
「俺の家で何してやがるクソッタレ、ご母堂と兄貴に捕まってる筈だろうが」
「いやはや事は一刻を争うという奴でね、母は兎も角として兄は私の能力を把握しているからね、とりあえず執行猶予と減刑のために働くよう仰せつかったんだよ、それと口汚いよ後輩、それともナニかい? 私の排泄物に興味が有るのかな? だったら喜んで見せるけども」
間違いなく祖父とお袋に無関係の御近所さんが巻き込まれるし貴重な資料とかもあるが今すぐに実家に特大の隕石とか落ちて来ないかな、できれば辺り一帯をクレーターで灰塵に帰すレベルの奴、どれだけ能力が有ったとしてもコイツを野放しにするとか人類の恥だろ。
「さてさて、とりあえず私の情報網と少しばかり東京でお仕事中のお祖父様の情報網とで逮捕まで漕ぎ着けたし時間を置かずに送検、そのまま裁判だ、そのおかげか私もマスコミに狙われ中でね、流石に実家に迷惑はかけられないし兄も匿ってくれない、私の家だとセキュリティが甘いし御近所さんにも迷惑って事で君の部屋に居候中さ、それはもう八面六臂の活躍の末とは言え辟易させられる、感謝したまえよ後輩」
「とりあえず聞き捨てならねぇのは俺の部屋にアンタが居候してるってところなんだが? 客間なら嫌ってくらいにあるだろう」
「私だって女だからね、マスコミに追い掛けられて恐い思いをしたから君の匂いを感じられる部屋でって言ったら貸して貰えたよ、しかしベットの下にエロ本の1冊も無いなんてステレオタイプをなんだと思っているんだ、本棚とか隈無く探したけど無かったし枯れてるのかい?」
「ハハっ、死ねよクソッタレ」
「相変わらずツレナイし辛辣だね君は、墨巣さんはこんな風になっちゃ駄目だよ、感謝より先に毒を吐くなんて酷いだろ? まぁ安心すると良い私の情報は君にとって大いに役立つし君の友人達から励ましも受け取った、なんならこの危険な立場で仲介役のポストウーマンを引き受けても良いよ」
しかし絶好調だな、まるで水を得た魚の如くツラツラと口を回しているし機嫌も俺が知る限りで最高潮だ、ここまでの舌戦も珍しいし相当に興奮しているらしい、と言うか爺様は居ないらしいがお袋と親父は先輩を野放しにして何をしているのかね、仮に留守を預けているのだとしたら先輩以上に問題がある奴は園児くらいだぞ。




