垂涎
四戦二勝一敗一分けか、急激に力を付けているが何が有ったと問いたくなるな。
まぁおそらく寝る前とか、俺が池で泳いでいる時とかに一人で練習していたのだろうがそれにしてもメキメキ強くなっている、おそらく次は勝敗が半々になりその次は負け越すかもしれないな、流石にハンデが大きく中々に苦戦を強いられる。
まさかたったの数戦でここまで追い込まれるとは思ってもみなかったな、と言うかそこそこ長期戦になるとか予想外にも程がある、ハンデ戦とは言え普通ならまだ長くて10分とか越えないのに30分が当たり前だ、時間制限気にしないで長考とかもあるから仕方がないのかもだがそれにしても実力差が埋まってきている。
頭脳労働で消耗した体力を回復させる名目で時間を置いているがかなり疲れたな、それだけ墨巣さんに翻弄されているって事だろうし墨巣さんが強くなっている証拠だが早いな、このペースだとキャスリング有りのルールも夢では無いし最後の最後は俺より強くなっているかもしれない、そうなったら今度は普通のチェスでだがそっちは流石に大丈夫だよな、そっちでも始めて1年足らずの人に負けたら立ち直れないぞ。
例えサークルの実力は低くてその中で中間を上がったり下がったりする程度の棋力とはいえ10年はチェスをやっているのだ、駒の動かし方を知っている程度の墨巣さんに春までに負けたならそれはもう心が折れるとかプライドがどうとかの問題ではない、天は二物をと言うがアスリートとしての身体能力に見る者を圧倒するモデルでも通用する美貌、そこに棋力まで足されたら笑えない、知力で無いだけマシかもだが言動を見るにそこそこ頭も良いらしいんだよな、そこまで行くとソノ先輩並みの才媛という事になるぞ。
あの人は天才的でないにしても頭はかなり良いし、アスリート並みではないが身体能力も高い、グラビアアイドル並みのプロポーションと美貌、頼り概も有れば助けたいとも思える人徳が有る、器と言うならあれほどの大器は中々に居ないくらいで、そしてそれらを全て台無しにする変態性を持っている。
そう考えると神様って凄いよなちゃんと帳尻合わせるんだから、ならば墨巣さんにも帳尻を合わせるだけの何かが有るのかね、本人に言わせればバストサイズとかなんだろうが魅力に思うかは人に依るしな、俺からしたらただの板でしかないが他の誰かから見たら垂涎かもしれない、実際に涎を垂らして近付いて来たなら間違いなく右ストレートでKOだろうが。何故だろうか先輩が涎垂らしながら墨巣さんに近付いて全力ストレート食らって倒れながらも喜んでる姿が頭の中でハッキリと見えた、それを絶対に有り得ないと一蹴できないのが先輩の先輩たる由縁だが物凄く微妙な気分だ、嫌とか気持ち悪いとかではなく微妙な、なんとも言えないモヤモヤした気分だ。




