独特の疲労感
拠点に戻り竈の近くで体を温めつつ潮汁を一杯注いでゆっくりと飲む、弱火でコトコトなのに物凄く熱く感じるのは間違いなく温度差だな。
流石に竈の熱で指先が痺れるように温まるような、雪の日にバイクで走り回った後の炬燵のような感覚はないがジワジワと体は暖まってくる、さらに温かな潮汁を一口飲む毎に慣れてきて胃の中から暖まってきて染み入るようだ。
飲み干す頃には体に熱が戻ってきて指先まで力が通るようで飯食ったら回復とかなんと言うか現金だよな、とは言えまだ腹は満たされていないし少し早いが調理を始めて昼飯を済ませるとしよう。
手早く調理を済ませて腹に納めてようやくホッと一息だ、これなら風邪になるとも思わないし心置き無くのんびり過ごせるな。
しかし冷たかったな、夏場もそうだったが何故にここまで冷たいのか謎だな、ほんの数キロ離れた場所だと温泉川が流れているというのに雪融け水や井戸水かと問いたくなるような冷たい水、湧き水は大抵冷たいなんて誰かから、おそらく昇か昇の親父さんから聞いたような記憶もあるがここまで冷たいものなのかね。ツラツラ考えては見たが答えが出るはずもない、まぁそういうものだと割り切っていこう、どうせ答えなんて出ないし仮に答えを知る誰かに懇切丁寧に説明された所で理解できないだろうし右から左だ、次の日には忘れている事だろう。
体を温めてくれていた残り火を手早く処理してテントに戻る、いやはや半分休息日だというのに中々にヘビーな立ち上りだったな。
と言うか泳いだせいか体がフワフワしたような疲労感がある、この疲労感は独特だよな、高校の頃とか朝一で泳いだ高2の水曜日とかその後の授業をマトモに受けていたのが不思議だ、体力かそれとも若さか、前者だと信じたいな。
「少し良いかしら?」
そう言いつつチェス盤を持った墨巣さんが近付くる、その意図を把握して否やはない、どうせ今日は休みだしな。
ポーンを囮にしつつナイトで牽制、コレに釣られてくれたなら中盤戦は制したと言っても過言ではないし終局まで一気怒濤に流れていく。
残念ながら釣られる事なくビショップを動かして逆に牽制か、コレは中々に読み辛い局面だな、さてどうするか、一度退いて様子見か、それともさらに牽制を打って焦りを誘うか、或いはもっと大袈裟に釣ってみるのも有りだろう、駒は互いに5、質ではアチラが勝っているしここは牽制かね。
数手の応酬の中で駒を失い、逆に討ち取り、かなりの接戦だな、しかしまだ青い。
ナイトでビショップを挟んで潰し代わりにポーンを失うが予想通りだ、続く一手でナイトを差し出しコレに掛かればビショップがサヨウナラ、気付いた所でポーンは食える、どちらに転んでも駒差は向こうが上だが位置取りが悪い、ほぼほぼ詰みだ。




