特殊地形
新しい狩場はあらためて見てもやはり小さい、深さも幅も浅く狭いが逆を言えばコンパクトに収まっているとも言える、まぁポジティブに置換したところで何が変わるでもなし、とりあえず見ていこう。
岩の表面や海底、前者は岩牡蠣が後者はサザエがいる事の多い場所であり、貝というのは捕らえるのが楽なため食料としては優秀なのだ。
いつもの磯なら岩牡蠣の群生地を知っているのだが残念ながらここは初見、一通りは見て回る必要がある、もしかしたら磯手前の岩場に居る可能性もあるがその辺りは後日で構わないだろう、雲で日が陰り薄暗くなってきているし安全のためでもある。
岩影や窪みが少なく、潜んでいる魚も少ない、小さな蟹なんかはいたから餌になる生物は豊富だろうから蛸やなんかは多い筈だ、この辺りはいつもの磯と変わらない。
それでもなんとか二匹の小魚とサザエを確保して引き返す事に決める、まだ明るいがこちらでの生活は始めてだ、少しでも明るいうちに拠点に戻りたい。
さて、生木に火を着けるのが面倒なのは初日に体験している、ちゃんと予測して準備してきてはいるがさて上手くいくだろうか。
リュックの中に入った木の皮やボロ布、多少の木の枝を取り出し今日切り落とした木の枝を加えて焚き火を開始する、布と木の皮に燃え移り、そこから木の枝に生木に太い薪にと燃え移る。
数分で立派な焚き火へと変わった所で串うちした魚とサザエをセットし放置する、後はしばらく待てば良い。
場所は変わっても味もやる事も変わらない、美味しい夕食を済ましてテントに引きこもり寝袋に包まれる、さて明日は磯までのルート選択と開拓で潰れるだろうな、本格的に水源を探すのは明後日以降になるだろう。
朝のBGMは場所が変わっても同じらしく、今日もまたピーチクパーチク騒がしい鳥達の鳴き声を受けてのんびりと準備を済まし、昨日のルートで磯に向かう。
薄闇の中を歩き、大陽が顔を出す頃に磯に到着する、さて今日は磯を細やかに歩き回って安全な場所の選定を済まして狩場を確定させてしまいたい。
岩場の隙間を抜けて一周、さてどう判断を下し、どう表現して記憶に焼き付ければ良いのやら。
イメージしたのは段々畑や九寨溝やイタリアか何処かに在るらしい似た地形の温泉、相違点が有るとすれば石灰が固まって新たに作られていくのに対して削られて何時かは消える地形という点くらいだろう。
前の磯は入り江と言うか谷になっていた、この磯は段々畑、全体として四枚の池というか巨大な潮溜まりになっていて最下段でさえ退いた波打ち際よりやや高い、最上段なら波打ち際より目算で30センチは高い。




