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アンサンブル

 最悪だ、起きて早々出鼻を挫かれたと言うか、気持ちよく眠っていたのを叩き起こされたという以上に最悪の気分だな。

 風がビュービュー音を立てて鳴り響き、木がバサバサと枝葉を打ち付けている、どうやら雨も降り注いでいるらしくバタバタともボトボトともテントに打ち付けて雷がゴロゴロバンバンの不協和音。

秋の台風は夏のソレより強いってのが俺の中の勝手なイメージとしてあるのだが今回のはこの島に来てから最大の大荒れ模様だ。


 流石にこれでは作業なんてできそうにない、と言うか外に出たら、いや出なくても飛んできた枝とかで死ねるくらいに風が強い、おそらくと言うか間違いなく天気予報図を見れば島の真上に巨大な、少なくとも勢力としてはかなり大きな台風か低気圧が居座っているだろう。

 コレほどの荒れ模様は数年に一度体験するかどうかってくらいの大荒れでテレビ中継とかなら波の高さに波止場での取材を断念するだろうってくらいに大荒れだ、まぁ海がどうなっているかは解らないが少なくとも平穏無事ではないだろう。

午後のニュースで屋根の様子をとか水路の様子をとか流れるだろうなって確信するくらいの荒れ模様で傘なんか玄関を出た瞬間に意味を無くし車の運転すら危険で徒歩や自転車なんかもってのほか、電車等の公共交通機関も麻痺するだろうと思うくらいに酷い。


 さてどうしたものか、と言うか何もできないのだが思わぬ状況に狼狽えてしまう、外に出る事ができないのに作業なんて不可能だし墨巣さんに声を掛けようにもこの雨と風の中だと聞こえないだろうな、喉が張り裂けるくらいの大声なら届くかもだが試す気にはならない、と言うかそこまでして伝える事なんか無いし休みというなら見ただけで解るし外に出るなというのも見れば解る。

 残念ながら二度寝くらいしかやる事は無いのだが眠れそうにない、この騒がしさの中では大抵の場所で眠れるという特技とも呼べない特技を持つ俺でも限度はある、石の上や板の上でも眠ろうと思えば眠る事ができるが爆音アンサンブルの中で眠るのはちょっと無理だ。

少々と言わずに早めの時間だが眠れないと割りきって起きるとしよう、まぁ起きていたところでやる事なんて何もないからひたすら時間と台風が過ぎるままに任せるだけなのだが。


 昨日は静かな森の声に耳を傾けて悟りのなんたるかを考えていたというのに今日は不協和音の大音量を聞かされながらか、悟りと言うか地獄について考えたくなりそうだが逆境でこそ開ける道もあるだろう。

 無に近付くために集中するという矛盾の中で雷の爆音やバサバサ五月蠅い木々にイライラして悟りどころか無になる事すらできやしない、やはり悟りの道は遥か先で俺では到達不能だな、と言うか般若心経の一つも唱えられなのに開ける筈もないのだが。

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