気の緩み
思考の深海に埋没しながら昼までを過ごす、ひたすら無意味な事を考えながら過ごしたとも言えるがカオス思考を加速させ続けると何処にどう向くのか自分でも解らないから楽しめる。
ひたすら連想ゲームを続けてより混沌に多角的に意識が飛んでいく中で何かしらの真理に近付くかとも思ったのだが当然ながら近付く筈もない、ただただグチャグチャにハチャメチャになっていくだけだ。
と言うか悟りの道を探索するために無を目指している筈だったんだがな、何がどうなってスイッチが切り替わったのか解らないが取っ掛かり一つで暴走するのはままある事だし気にしないでおこう。
昼食を終える頃にはようやく本調子とは言わないまでもかなり調子を戻している、それでもまだ移動には問題があるな、残念ながら溜まりに溜まったダメージはかなり深刻らしく動き回れそうにない。
これは予想外だな、肉体へのダメージがこれだけ大きいとは思ってもいなかった、そこまで無理をした記憶もないのだが塵も積もればで節々に蓄積されていたらしい。
それが長期休暇という気の緩みで一気に表に出てきて大暴れって感じかね、そう考えると全く関係ないタイミングで顕在化するよりは良い、作業中とか遠出中とかに一気に伸し掛かってきてぶっ倒れる可能性を考えると休暇のタイミングに現れたのは僥倖だ、墨巣さんの身体能力がどれだけ優れていても大の男を一人に担いで拠点まで戻るのは不可能だろう、今の作業現場なら距離的にギリギリ可能かもだがその後を考えればかなり厳しい物がある。
夕方までしっかりと体を休めてようやく軽々ではないにしても動けるようにはなったな、とは言え万全ではないし明日の温泉で一気に復調のペースを上げたい、でないと4日にも及ぶ過去最大となるであろう長期休暇を取る事になり停滞も極まってしまう。
停滞したところで困るのは雨の翌日の俺くらいで構わないと言えば構わないのだろう、別に毎日温泉に浸からないと死ぬなんて事はないし気持ちいいし心地良いのは認めるが我慢できないレベルでもない。それでも気が急いてしまうのは何故なんだろうな、時間を掛ければ掛けるだけ後に来る余暇を遅れさせると言うのに。
さて久々にハモか、骨切りを済ませて湯引きして潮汁に、小魚を焼いてカサゴを煮付けに、久々だが完璧だな、染み付いた技術は簡単には抜けないし忘れない、嫌と言うほどにハモを捌いたあの夏が懐かしいな、あのバカのせいで今後に全く役に立たない技術を身にしたと思っていたがこんな事になるなんてな、ある意味では感謝だが同時にバカ野郎と言ってやりたい。
おそらく大学入学して間も無くアレだけのハモを捌いた奴は今世紀で俺くらいだろうってくらいに捌いたからな、毎日釣って来るわけでは無いにしても一度に五尾は持ってきてそれが週に一度か二度、一月半にも及んでだ、その後も毎年毎年だったからな、嫌でも骨切りをマスターしてしまう。
おかげで皮一枚残して切る妙技もまた会得して簡単な飾り切りくらいならできるようになってしまったくらいだ、正月くらいしか披露する機会はないから全くもって嬉しくはないのだが。




