サバイバル想定
「じゃあまぁ、時間も差し迫っている事だし買い物に洒落込むとするよ、お洒落できるほどの余裕はないだろうけど」と皮肉とも言えない皮肉を残して中座しようと腰を上げ所で
「健太、遅くなったが卒業おめでとう、式には出席できず、すまなかったな」と親父が声を掛けてきた。
相変わらず影が薄い、居た筈なのに祖父のせいで忘れてた、見れば持ってきた酒を手酌で1人黙々と呑んでいたらしく、一升瓶はほぼ空になっていた、いや本当に申し訳ない、だが恨むなら人間性の濃い祖父を恨んでくれ。
親父はさておき、さてさて買い物である、無人島に何か持っていくなら? サバイバルに必要な物は? そう問われれば俺はこう答える『浄水器』と。人間は食わなくても多少は持つ、だが水が無ければ1週間と持つまい、かと言って泥水や生水を啜る? そんなのは愚策だ、当たり前だが救助が求められず、薬もない状態で安全性に疑問が残る水を飲めば腹を悪くし、余計に水分を消費し体力を奪われる、サバイバルにおける大前提は生き残る事であり脱出は二の次とはワンゲル部の友人の弁である。
彼によると一人で山に登ったとしても事前の登山行程やらを伝えておけば、仮に遭難しても救出される可能性が高いため、迷った時点で動かず体力の消費を抑えるのが基本で、食料や水の確保ができなくなるまでは動かない方が得策らしい。
当たり前だが動けば体力を消費するし『この尾根を越えれば道が見える』なんて希望を抱き、反した時の徒労感は心を疲弊させる、だから『遭難したら動くな』これが鉄則である、と登山趣味の全くない俺に教えてくれた、まぁ『裏山で遊んで迷子になりかけた』とか言った俺も悪いが。
今回の場合は、場合が場合ではあるため食料や水の確保のため動かなければ死ぬ、だからといって水場を見付けて即座に飲むのは危険だろう、これが有名な湧き水とかで飲めると知っているなら別だが、祖父は煮沸を言及していた、となれば多少の雑菌はいるはずで、この多少の雑菌が命取りになり兼ねない。
煮沸より手軽で大抵の水に対応できる浄水器は必須だろう。
二つ目はやはり『火』であろう、調理に暖にと毎日使う、問題は使用期間が1年持つか解らないライターか、持つであろうファイアスターターかで、今回は後者を選ぼう、まぁ念のため買うならファイアスターターが含まれたサバイバルキットだな。