モラトリアム
夕食として魚と牡蠣を頂き、何時ものように火の始末を済ましてテントに引きこもり寝袋に入る。
明日の目標は床を一部だけでも完成させて座れるくらいにはする事、竹銛で材料を少しだけ使ってしまったが誤差の範囲内だし、少なくとも半分くらいは余裕で埋まる筈だ。
テントから這い出てノビを一つ、大きな欠伸を済まして顔を洗い、荷物を背負って狩りに出掛ける、つい数週間前までとは違う朝の習慣を謳歌しつつ1年も延びたモラトリアムを享受する。
まぁ就職のためでも有るからモラトリアムというより就活か、一度失敗しているから良いイメージはないが、あの頃のままなら活路すら拓けず、良くてアルバイト浸け、悪ければニート街道だ、それを考えればサバイバルの現状も悪くないかもしれないな。
朝の成果は小魚とサザエとウニ、それに漂着物として何本目になるか解らない釣糸、帰宅して仕事に余裕が生まれたら砂浜掃除のボランティアには積極的に参加しようと心に誓う、現状では助かっているが流石に酷すぎる。
自然破壊がどうのこうのと言う訳では無いがここまで如実に視覚と体験として漂着物の多様性と量を感じてしまうと少しでも何かをしたくなってしまう。
さて本日も焼き魚と焼きウニにサザエのつぼ焼きだ、いつも通りに醤油をケチって使う、代用品としてめんつゆは有るが甘いし出汁の香りは邪魔になる。
だが煮物には良いんだよな、南瓜とか里芋とか煮る時にワザワザ砂糖や味醂で調整する手間なく作れるしきんぴらごぼうとかお浸しを作る時にも重宝する、まぁ現状だともて余すだけだ。
何かのタイミングで使う日も来るだろうが今はまだ眠らせるだけだ、顆粒出汁と共に荷物の奥底で静かに時を待ってもらうとしよう。
さて本日も作業を始めるとしよう、サイズを調整しながら竹を切り分け、半分に割っていく、とにかく単純作業として次々と竹と格闘し、大量の割られた竹を梁に渡してロープで結ぶ。
多少の隙間はあるがそれでも半分と少しが埋まり、後2日もあれば床は完成となるがその前に実験として体を預けてみよう。
とりあえず腰かける、ただし地面と然ほど離れていないため胡座でになるが尻を床に置き、そのままゴロリと体を倒す。
割っただけで節も抜いてない竹の頑強さはかなりの物らしく体を預けてもやや軋む程度で問題ない、ならばと体を全てを床に乗せてみるがやはり耐えてくれる。
体重を掛ければ別だろうし無理に力を掛ければ壊れるだろうが普通に寝転がる分には問題ない、少なくとも一度や二度の使用で壊れそうにないし修理も容易だ、問題は床が若干ながらガタガタな事と壁がない事くらいだな。




