定期報告(9月)
ひたすら作業に没頭して手分けをしつつ効率よく動いたと思うが予想通り完成には全く届かない、ざっと七割って感じかね。
まぁ予定通りだし肩を落とす事もないだろう、疲労度を考えても明日には完成するだろうしな。
川を渡って合図を出し、その場を離れて少しだけ待つ、脱いで渡って足元を拭いてまた着てとなるがざっと10分は掛かる、俺の場合その半分もあれば十分なんだが男と同じにと言う訳がない。
墨巣さんと合流してからのんびり森を進み、途中でスマイリーとスレ違う、本当に御近所さん感覚に近くなってきたな、思わず会釈してしまいそうになるくらい自然にそこに居ると言うかなんと言うか。
何時ものようにニヤリと口角を上げてスレ違い、そのままノシノシと温泉の方向を目指して頑張って作った直通路を歩いていくスマイリーはなんと言うか日常の風景だな。
消え去る背中を見つめていても仕方がないし拠点を目指すとしよう、疲れもあるが残り半分くらいの道のりだ。
拠点に戻り装備を替えて磯を目指す、さて今日の夕食が何になるのか、海の恵みを楽しみに坂道を下っていく。
タコが二匹にウニが四つ、小魚が少々に久々にハモか、煮付けに潮汁に焼魚って感じかね。
骨切りしたハモを茹でめんつゆと合わせて椀に入れて上にウニを乗せる、竹を切っただけという所を無視したら京都の料亭辺りで出てきそうだな。
タコは滑りを取って煮付けに、魚を串打ちして焼き、本日も豪華な夕食が完成だ。
腹が満たされたところで片付けを済まして気合いを入れ直す、簡単な報告とは言え狸爺を相手にするにはのんびり気分というのはマズイ、まぁ向こうの話によっては簡単なで済まない可能性もあるのだが。
「はいもしもし高田です」
この嗄れた声は間違いなく祖父だな、少々疲れが見えるが夏バテだと良いな、それなら報告に頭を抱える事もないだろうし。
「健太だけど親父とお袋は居る?」
とりあえず二人、いや墨巣さんを含めると三人だが、お目付け役無しで対応するとマズイ、流石に無理難題を吹っ掛けられたりはしないだろうし、条件に関しても話が付いているがその他の事柄で何かしらの動きを見せる必要が有るかもだ。
警戒しておいて損はない、まぁこの島でできる事なんてないし手助けを求められたところでどうしようもないから大丈夫だろうが万が一、億が一の可能性を潰しておきたい。




