所作
自分で言うのもなんだが美しい動きで正座する、この辺りの躾はけっこうされていたからな、茶道家や武道家とまではいかないがスムーズで美しい所作で正座に移行できたと思う。
下は地面だが全く気にしない、と言うか気にしてはいけないな、そのまま頭を下げつつ両手を地面に着けて頭をその間に納めるように下げていき、そのまま額を地面に着ける。
流れるような動きで教科書に乗りそうな綺麗な土下座だろう、ただただ謝罪を示す通常において最大の姿、ネタ的には土下寝や、さらなる上位として切腹とかあるが流石にそこまでは無理だ。
「えっと、何をしているの?」
何をしているの? と来たか、見ての通りとしか言えないがさてどう答えるかね。
「謝罪を示しているとしか言えないな、プレゼント用意できないのはともかくとして忘れるのはまずいだろ」
「私としては貴方が覚えて……完全には覚えてはいなかったみたいだけど覚えていた事に驚いてて謝られても困るのだけれども」
困ると言われてもこちらが困ってしまう、しかしどうだろうか、確かに忘れていても仕方がないと言うか、つい3ヶ月前まで赤の他人、いやこの3ヶ月が濃密だった事を考えれば関係性としては単純に時間では推し量れないだろう。
なんと言うか戦友とかそんな感じの立ち位置、一心同体ではないが一蓮托生に近い。そんな相手の誕生日を忘れかけていたというのはかなりの大問題だろう、と言うか完全に忘れてなくて、何時ものように流さなくて本当に良かった。
墨巣さんに促されるまま立ち上りようやく移動開始だ、まだ漁すら済んでいという事実に愕然としてしまう、もう1日分の作業を終えたような寂寥感がある、少なくとも精神的に疲弊はしているな。
さて漁果は小魚とタコか、とりあえずタコは炒め物にして朝飯にするとして小魚は焼き干し行きだな。
明け方を朝食と共に迎え、お弁当持参でのんびり歩き出す、流石に食休みを挟むだけの時間的余裕はない、今日は鳴子を必要量作って一部だけでも設置が目標だ、温泉の整備が無くなったにしても長期戦なのは同じだしな、僅か10分でも短縮できる部分は削りたい。
竹を担いで、と言うかかなり余るな、階段の材料にでもするかね、イメージは幾つかあるから現実的な物を選ぶのは確定、歩きつつ考えてみるかね。
まずは石組みによる土止めだな、階段を作って石を置いていって土止めとするパターン、二つ目は板や竹を使ったパターン、後はなんだろうかそれこそ石積みの階段とかね。
流石に最後のパターンは無しとして石か竹かだな、とりあえず石の場合運ぶのが大変で数を揃えるのも難しいがほぼ掘らなくて済む、竹の場合は更に2パターン、柱を並べて壁にするか柱に結ぶ梁のパターンか、どちらにしてもある程度掘る必要があるが材料の確保は容易く搬入も楽だ。
とりあえず前者の場合は何本も埋めないとだから面倒だな、となると後者だが左右に埋めてといったところか、さて難しいな材料集めの大変さかそれとも作る大変さか、いや足場の悪さを考えると答えは出ているか、竹だな。




