記憶
一部しか加工できなかったが半分を越えるくらいは作れたと思う、さて明日はもう一度だけ竹を運べば鳴子と台の分に足りるだろうし、お弁当持参で一気に鳴子作りを進めて一部だけでも警戒網の設置といこう。
ひたすら歩きつつ明日の予定を仮決定して、拠点まで戻ってきた、直通路を進んだのだがやはり遠いな、これ以上は望めないのだがもっと近ければとは思ってしまう、欲に限度はないと言うが本当らしい。
とまれ、そんな事を嘆こうが騒ごうが現実は全くこれっぽっちも変わってくれない、その程度で岩場が消え去りクレバスは埋まるのなら誰も苦労はしないだろう。
小魚とタコか、それにクロダイ、夕飯の漁果としては十分だな、小魚は焼いてクロダイを煮付け、タコは炒め物にしよう。
テキパキと捌いて滑りを取り鱗を剥がして下処理を済ませてそれぞれを焼いて煮付けて炒めていく、醤油も味醂もそろそろ残り半分だが新しい物もあるし残り半年以上はあるが十分に余裕があるか、流石に湯水のようにとはいかないが煮付けなんかが食卓に並ぶ率は高い。
ついでに確認してみたが米も始めに届いた分がまだ少しだが残っているしそこそこ余裕はあるな、このペースが続いた場合、後半はかなり派手に使う事になりそうだが使いきる必要はないのだしそこまで気負う必要もないか。
夢見と目覚めが悪いせいで気分は最悪だな、何が悲しくて先輩に弄ばれる夢を見なければいけないのだ、と言うか何が悲しくてあの人を夢に出さないといけないんだ、俺のキャスティング力は皆無か、百歩、いや万歩譲ってあの人を夢に出すにしても、ひたすらくどくどと懇々と説教している夢とかだろ。
全くもって気分が悪い、ともすれば機嫌が悪くなりそうだ、と言うかそろそろ報告の時期だよな、えーっと9月の23日か。
なんだろうか、何か引っ掛かる、23日ね、23、何かが有った、何かが有ったがそれが何かまでは解らない、なんとなく本当になんとなく、気のせいとしか思えない程の些細な引っ掛かりなんだが拭い去れない。
何時もならどうでもいいやと無視して1日のなかで忘れて、そんな微妙な、微細な、記憶の何処かで叫ぶ何か、本能的に忘れてはいけない、思い出せと認識するような感覚、とは言え完全に忘却の彼方だ。
「えっと、今日って、あぁ9月の23日なんだけど、確か何かが有ったような気がするんだがどうしても思い出せそうにないんだ、何か心当たりはないかな?」
「えぇ、有るわね、と言うかよく覚えていたわね、私の誕生日よ」
なるほど、つまりこれは土下座を披露する時が来たらしいな、完全に忘れていたと言うか、本当によく覚えていたな、確か墨巣さんが流れ着いた頃に声紋確認の時にだったか、夏前だからおおよそ3ヶ月前、本当に覚えていたのが奇跡と言える。




