軽蔑
さて、温泉回りの森は何度か行来しているから良いとして、問題は向う岸だな、川幅的に渡るのは難しくないが濡れはする、流石に服を脱ぎ捨ててという、いやそれしかないな。
残念ながら上流を目指してというのは現実的ではない、上流に近付けば湯温が上がるし、万が一ガス等が危険域に達していたならと考えると愚策だろう。
かと言って迂回しようにもどの程度必要かの目処も不明、なら比較的安全なこの辺りを渡るのが最短ルートで賢い選択だろう、ただ渡る位置だけは注意深く観察だな。
海岸線から温泉予定地を行来して他より浅めで向う岸も壁などではないポイントを選び、さぁ渡るとしようか。
とりあえず墨巣さんに離れてもらい、服を脱いでリュックに入れて頭の上に乗せる、まぁそんな事をしなくても深さ的に腰までなんだが万が一にも濡らす訳にはいかないしな。
数分と掛からずに渡りきり藪の中で体を拭いて服を着る、その後で指笛による合図をしてその場を離れる。
数分待って聞こえてきた墨巣さんの声に安心して合流する、しかし川から少し離れないと木が生えないのは温泉によるものなんだろうな、ぬるま湯から適温とは言えお湯だし流石にそれを飲んで成長ってのは無理なんだろう、泉質とかではないと信じたいがもしかしたら地質的な物かもしれないが。
とりあえずこちら側に来るのは初めてだが変わらずだな、森は広葉樹と藪、地面は土やら腐葉土やら岩やら、何度となく見てきた光景だな、おそらくこれは島の何処であろうとも変わらないのだろう、まぁ今まで見てきた範囲を足していっても半分にも満たないから間違いなく間違いなんだろう。
さて、とりあえずそろそろお昼休憩だ、と言うか警戒網を張るのは容易いだろうがどうしても隙間は空きそうだな、流石に川を渡してというのは無理ではないが風とかで揺れそうだしな、不完全でスキだらけの防衛策だが無いよりマシだろう、少なくとも警戒する方向を川上と川下に絞れるし俺達のどちらかが温泉を楽しむ間はもう片方が基本的に川下に居るのだから実質は川上にだけ警戒すればいい。
まぁ墨巣さんの場合、俺が覗く可能性を捨てきれないなら両方だが、その方面で信頼を勝ち取るためにどれだけ俺の性癖について懇切丁寧に説いて聞かせたところで帰ってくるのは納得や信頼ではなく軽蔑とビンタだろうが。
さて、とりあえず森の中はチェックできたし、海岸線を確認しようか、河口付近が微妙に岬になっているせいで死角が生まれてて見えてない部分が大半だったし。
まぁどうせ砂浜か砂利浜か岩場続きの代り映えしない光景で、特別な何かがあるとしても漂着物くらいなんだろうが。




