最後の一杯
夕飯を済まして明日に備えてゆっくり休もう、ただその前に念のため体を温めておこうかね。
湯上がりに動き回ったしまだ9月で残暑も厳しいから大丈夫だとは思うが湯冷めして風邪なんて全く笑えない。
お湯を沸かしてタンポポコーヒーを入れる、これが最後の一杯となるが群生地が何処かにあってほしいな、ノンカフェインで薬茶のような物という事を考えるとかなり有益なものだし、コーヒー党の俺としてはこれが最後となると物悲しい、できれば新しい群生地が見付かればいいのだが。
竹のカップに入ったタンポポコーヒーを墨巣さんに渡し、俺も俺で温かなコーヒーを楽しむ。
「えっと、お砂糖貰えるかしら?」
「残念だがないな、ブラックも慣れれば美味しいがどうしてもなら缶詰のシロップか味醂を入れるくらいしか思い付かない」
まぁその場合は間違いなく不味くなるだろうがそれは言わずともだな、まぁ我慢すれば飲めなくはないと言うか、俺も最初はたまたま砂糖がなくてブラックコーヒーを飲みそこから惰性と慣れで続けている、初めの数口は我慢が必要だが意外と飲めるし、飲み終わる頃には悪くないと思えるようになり、そこから惰性で続ければミルクも砂糖も必要なくなる、まぁ俺の経験則でしかないのだが。
墨巣さんは苦々しげに、俺は美味しくコーヒーを飲み干してゆっくり眠るとしよう、体も胃の中から暖まったしこれなら風邪の心配は薄い筈だ。
まぁ病魔に負ける時は何をしても無駄だから気休め程度だがやらないよりマシだ、今日の様にその可能性が高まっている時は往々にして悪い方に転がる時がある、特にリバウンド期はその傾向は大きいからな、少しでも芽を摘み取っておきたい。
目覚めが違う気もするが完全に気のせいだな、流石に朝頃に浸かった温泉が眠りにまで影響がある筈もない、寝る前に一っ風呂なら兎も角として半日以上となるとな。
まぁそれでも調子はかなり良好だ、この1週間で最高とも言えるくらいに万全の状態に近い、普通に考えて疲労が顔を覗かせる頃合いなのに気配すらしない、この感じなら今日中にルート開拓が終わるっていう非現実的な壮大な夢を見るくらいはできるかもな。
漁を済まして焼き干しを作りお弁当片手に作業に向かう、しかし焼き干しが次々と新しい物に変わっていくのは楽というかなんと言うか、古くなった頃に一気に交換する必要がなくなるから楽と言えば楽だが。
とは言えこれも期間限定だしな、まぁ温泉が使えるようになればお弁当持参の湯治というのもあるかもだが。




