弊害
なんと言うか慣れたな、大事件って感じが一切しないのだがこの辺りがズレているという証左だろうな。
墨巣さんを確認してみれば表情が強張っていて怯えている、確かにあの巨体を前にすると俺だって多少は怖い、向こうにそのつもりは全く微塵も無くてもどうしたって威圧感はある。
纏う野生のオーラすら可視化しそうなくらいに彼は大きく厚みがあり、人として捉えるならラグビーのスター選手のような感じだろうか。
とりあえずこの場に立ちすくんでいても仕方がないし移動しよう、時間的に余裕はあるが準備もあるし。
拠点に戻り装備を入れ換えてから磯に向かう、何時ものようにテキパキと漁を済ませていく、今日はタコと小魚だけか、墨巣さんがボウズだと大物がなくなってしまうな。
そう言えば銛での漁でもボウズって言うのかね、釣りだけに限定されるかもだがまぁどうでも良いか、辞書もないし間違っていたところで困らないし。
拠点に戻り塩で揉みタコの滑りを取る、そろそろ塩の量が怪しくなってきたな、タコがよく捕れている弊害がこんなところに出るとは思ってもみなかったが幸いにしてまだ余裕はあるし次の休息、いやその前にってのが無難か、明後日辺りに塩作りをしよう。
タコの塩焼きに小魚の串焼きを楽しみ、そのままテントに引きこもる、さて明日はあの壁との戦いだ、残念ながら明日抜けるのは不可能だろうからしばらくは連戦だが。
久々に気持ちのいい朝だ、よく眠ったと言えるくらいの快眠で朝から調子が良い。
とは言え喜んで駆け回るって年でもないし2時間もしないうちにグロッキーになるのだろう、漁までは問題ないにしても開拓作業で体力を相応に使うだろうし。
小魚にタコにクロダイと何時もの面々を手に拠点に戻り装備を入れ換えてから現場を目指す。
やはり迂回しない分だけ早いな、この調子でドンドン進みたいが壁は非常に厚い。残念ながら今の装備だとチマチマとしか進めないしどう頑張っても装備が一新される事はない。
鉈で藪を切り開いて少しずつ進んでいく、蜘蛛の巣とか謎の虫とかも現れるが幸いにして蜂は居ない、これで蜂の巣が有ったなら地獄絵図だろうな、蜜蜂程度なら刺されて痛いくらいで済むだろうが雀蜂なら間違いなく死ぬ、特に俺は山歩きの中で一度刺された事があるからヤバいな、実家なら親父も居たし年一で刺される祖母用に抗ヒスタミン剤とか常備してたから助かるだろうがここでは考えるまでもない。




