運搬作業
朝の狩りに漂着物拾い、遅い朝食をテキパキと済まし、すぐさま森を抜けて竹林に向かう。
山とも丘ともいかないが、少しは積まれた竹を数本ロープで束ね、肩に担いで運びだす、ちょうどいいバランスを割り出すのも馴れたもので、やじろべえよろしく前後にフラフラしていた最初に比べればかなり安定して運べている。
途中の休憩中に竹林側の磯の規模を軽く確認する、時間的にまだ干潮には遠いが底が見える程度には水が澄んでいるためおおよその見当を付けるくらいは可能だ。潮溜まりになりそうな窪みや岩に張り付いた牡蠣、海底のウニやサザエといつもの磯に比べれば規模は小さいが食料の確保はできるだろう。
数日内には拠点を此方に移すだろうし、狩場の下見はやっておいて損はない、まぁ本拠地にすると仮定してまだ見ぬ場所は多い、今の拠点でさえ東側は上陸地点付近までしか見てないのだ、何かを見付ける可能性はまだまだあるし、1年で島中を探索するのは間違いなく無理だ。
何より狭い範囲で纏まっていた方が楽だし、嫌という訳でもない、縄張りやテリトリーと呼べる決まった範囲で生活が送れるなら良しである、無理な冒険はしない。多少の知識があり多少の経験を経たととはいえサバイバルは初心者、生兵法は怪我の元なんて言うが法則すら見いだせないこの身だ、無理は最小限で成果を最大に都合よくいくならそれで良し、いかないなら努力と知恵で改善して理想に近付ける。
それでも生きてはいけるし、事足りる、足りない時はまた改善改良、終わりなき作業に従事すれば1年なんてあっと言う間だ。
太い竹が二本と細い竹が二本、なんとか拠点に運び込みシェルター建築現場の近くに転がす。
今日はもう狩りの時間だし建築は明日だな、とりあえず屋根は完成するし床も一部だけ張れる、ついでに竹筒の蓋が完成し竹筒蛸壺も作れる筈だ。
引き上げた竹筒からようやく蛸が出てきた、数日掛けて一匹とはかなり酷い結果だが、捕れるだけマシだろう、とりあえず追加の食料として潮溜まりの水抜きを済まし蛸を一匹追加した。
蓋の件もあるし今日は竹筒を持ち帰ろう、明日いや明後日からは切り出しただけの竹筒を大量に沈める実験だな、ポイントの選定は本拠地を決めてからでいい。
本日の夕食は大量の蛸の炒め物のみ、多様性とか真っ向から否定してるな、そもそも鰯とハゼと蛸とウニとサザエがメインで多様性も何も有った物じゃないが、海の幸ばかりで山の幸が無いのが残念だ、もう2週間も経つのにタンポポやヨモギすら見掛けない、時期的にツクシとかフキとか生えてる筈なんだがな。




