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パニクる

 なんと言うか、スマイリーと会ったというのにそこまで精神的に疲労がないのは慣れたからか、それとも思い返してみたからか、とりあえず墨巣さんの顔は真っ青だし後者だろうな、俺の方が一度多く邂逅しているとはいえまだ片手で足りるから慣れるには早すぎる。

 となるとやはりスマイリーの気遣いのような物が起因かね、殺気どころか怒気すらなく興味を向ける事は有っても触れた事は一度としてない、おそらくそれは大いなる間違いだし野生に対して絶対にそんな事を思ってはいけないのだろうがスマイリーは俺達を傷付ける事はないし信頼感がある、そんな気すらしてしまう。

なんと言うか近所の任侠者を思い出してしまうな、彼らは基本的にマフィアから連想されるような犯罪は行っていないらしいし、法律上では庭先を貸して拠り所となっている高田家に、或いは拠り所を同じくする町の住民に何かをすることはないが、限度はあるし当然ながら町の外では相応に暴力と犯罪を友としている筈で、それでも普通にしている限りは、敵対しない限りは、尾を踏まない限りは御近所さんとして付き合う事はできてしまう。

それは大きな勘違いだし、何処をどう取り繕ってフォローしたところで彼らは社会に仇なす無頼漢でしかない、それをスマイリーに当て嵌めて考えてしまう。


 今日はもう作業って感じでもないし、お昼ご飯を済まして墨巣さんの意見も聞いてみるかね。


 「貴方頭大丈夫?」

 気持ちは解るが少しばかり酷いな、確かに俺のスマイリーに対する考えは異質だがそこまでかね? いやそこまでなんだろうな、流石に異常が過ぎる。

「大丈夫だと断言したいが賛同は得られないだろうな、信頼できるできない、するしないじゃなくて単純に警戒レベルを少し下げたい、そう言っただけなんだが、まぁ常軌を逸しているのは認めよう」

「ただそれでも、危険性を理解していてどうしたって俺はスマイリーを悪と、攻撃的な敵対者と思えない、合理的ではないし異端で異様で異常で異質だが、どうしても断定できない」


 なぜかは解らない、解らないがなぜか憎めないし信頼感がある、本能的に拒絶して警戒するような事案にも拘らず本能は真逆を叫んでいる、なんだろうなコレ。

 「正直に言って、貴方異常よ? 幸運を過信しているにしてもオカシイわ、奇跡的に助かっただけなのを勘違いして調子に乗っているとしか思えないわ」

ぐうの音も出ないくらいに正論だな、ただそれでも、と何処かで思ってしまう、あるいは数度目の邂逅で興奮してパニクっているかもしれない、と言うか高確率でパニクっていると考えた方が良いか、少し冷静になるため時間を置こう、落ち着いてからだ。

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