例え無駄でも
懸念が強すぎて集中できそうにもないが、可能な限り緊張感は切らさずテキパキと漁を済まして漁果であるハゼとウツボを墨巣さんに任せてすぐさま昨日缶詰を埋めた地点に向かう。
目印を着けた訳でもないが位置関係からおおよその位置は把握できているため、森の中とは言え1本の木を探し出すのにそれほど苦労はしない。
特に変わりはないな、掘り返したような後も無いし周りを確認してみても何者かが居た痕跡は無い、どうやら幸いにして見付からなかったか、もしくは一晩で移動できなかったか、どちらにしてもやる事は変わらないが。
掘り出した缶詰を一度水で洗い、ついでに掘り返した土も念のために川に流しておく、もしかしたら必要のない事をしているんじゃないかと思ってしまうが取れる手段は全て取って、僅かな可能性をより小さな数字にしておきたい。
さて、問題は木の虚だが、木々には困らないが虚が有るものとなると困ってしまうな、それも拠点からある程度の距離が無いと安心できず遠すぎると今度は取りに行くのが面倒だ。
となると外側の警戒網よりは外、池の周囲から川沿いにってのが妥当かね、あるいは空き缶を使って何かしらの道具にというのも手なんだろうが洗剤まで使って入念に洗ったとは言え懸念が強すぎて踏み切れない。
まぁそこまで気にする事も無いのかもしれないが、あれだけの甘さを受ければどうしたって心配が湧いてしまって、何をどうしても落ち着けない、それこそ三日三晩川に浸けても払拭できないだろう、ゴリラと顔を突き合わせてしまった身として、熊を見付けてしまった身としてその手だけは使えない。
森の中を歩きつつ、ようやく条件に合う木を探し出した、若干拠点に近いが仕方がないか、残念ながら完璧な条件に合致した物など在るわけがない、いやもしかしたら在るかもしれないが探し出すのにどれだけ時間が掛かるか解らないし妥協は必要だ。
少しばかり童心に返って木登りをして穴の中を確認する、これで鳥の巣でもあれば別の場所を探す必要があるが幸いにして木の葉や堆積物は有っても巣のような物は見受けられない。
そのまま空き缶を虚の中に入れて、念のために木の葉で蓋をして今日が8月の30日だからおおよそ1週間か、その日まで眠っていてもらおう、願わくば何事もない安らかな物であってほしいな。
一度拠点に戻り準備を済ませて先に向かっている墨巣さんと合流すべく森を抜け橋を渡る、そのまま墨巣さんと合流して開拓再開だ。
とは言え何処を目指すかとなると問題だな、一度温泉まで行ってそこから方角をチェックしつつと言うのがベストかね、それこそかなり簡易で切り開きながらロープと目印で繋いでそれを基準にってのが正当だろう。




