麻痺
気だるい体を叱咤しつつ漁を済ましてとりあえず水浴びからだな、大まかに汚れを落としてからじゃないとタオルで体を拭うのは後が面倒だ、今の今まで何度となく失敗しているが今回は失敗しない、どちらにしても洗濯は確定だが少しでも汚れを少なくはしておきたいしな。
「今日は休暇にするつもりでお湯も沸かすんだけどどうする?」
「そうね、疲れも溜まってるし私もお休みするわ」
まぁあれだけの下草を切り開くんだ、それも平地ではなく坂道で、疲れも溜まるだろう、とは言え枝葉についてはそこまで伸びてはいなかったからこれから始まる本格的な開拓に比べればかなり楽だ、それでも坂道か平地かでは大きく違う、まぁ平地でも多少の高低差はあるが数メートルを下る坂道は早々ないし、その辺りは本拠地回りの開拓で経験済みだ。
とりあえず話し合いの結果墨巣さんから水浴びが確定した、早いか遅いかだし譲っても良い、待つ間に墨巣さんの分のお湯を沸かすとして、俺の分は残り火を使ってかね、しかしこの暑さだからお湯で濡らしたタオルで体を拭うにしてもまた水浴びに行きたくなりそうだな。
竈での調整は意外でもなく難しく沸騰しないようにするのがやっとだ、流石に50℃を越えてしまうとタオルを絞る段階で火傷しかねないし微妙に火加減を調整しつつある程度を維持していく。
おおよそ30分程で墨巣さんが戻ってきて、若干ながら温度の高いお湯を渡して俺の分を竈にセットしておく、後は追加した薪と残り火でやや温いくらいで安定すると思うが冬場でもないし水浴びの後に調整しても大丈夫だろう。
服を脱いで体を水に沈める、まだ早朝と言っていい時間帯とはいえ暑いし、かなり気持ちいいな、これが昼ならさらに気持ちいいんだろうが暇を潰すにしても、なんとなくで過ごすという事ができなくなってきている。
休暇だというのに何かしらの動きをしないと落ち着かないと言うか、切迫感が常に有って休んではいても休んだ気はしないと言うか、そんな矛盾の状態で落ち着いてしまっている。
頭を洗い体を洗い、かなりサッパリするな、汗や垢や汚れが流れ去るが風呂と違って疲れも共にではないのが残念だが、その辺りは温泉に期待するとして今は体の熱と汚れを洗い流そう。
手早く着替えて拠点に戻る、この前はこのタイミングでスマイリーとご挨拶だったが今日は大丈夫だよな、大丈夫だと信じよう信じたい。
俺の心からの願いが天に通じたらしく何事もなく無事に拠点に到着する、なんと言うか素晴らしきかな日常って気分だな、非日常が過ぎて感覚が麻痺してきているがそれでも何事もない一瞬一時が輝いて見えるって、かなり末期だと思うのだが全力で視線を向けないようにしよう、思ってしまった時点で手遅れだが。




