報告終了
「記録って何時からの分? ひい祖父さんが買ったのが大体40年前でリゾート開発とかででしょ、計画中に持ち込んだとか買う前の調査中に持ち込まれたとかじゃないの?」
「親父が死んだのは買ってすぐで土地だけ欲しかったみたいで調査もやっとらん、まぁ国が植生調査くらいはやってたみたいだが、流石に役人が狸なんぞ持ち込まんだろ、環境保全にも煩い時代だタバコ一本持ち込めんかった筈だ」と捕捉された。
だとしたらやはり不法投棄か自然に泳いできたか、後は台風か何かで流された結果か、いずれにしても想像の範疇でしかない。
「じゃあやっぱり不法投棄か、特に監視とかされてないし勝手に上陸したと見て良いのかな?」
場所が場所だし釣り人とかが穴場にしてるかもしれないし、個人で船旅なんかを楽しむ人の中継地や廃品業者のメッカになっている可能性を捨てきれない。
「まぁ特に監視をしたりはしとらんな、調査も最近したのが数十年ぶりって単位だし、売りに出しても買う奴がいないから持っとるが管理もしとらん、間違いなく勝手に入った奴はいただろうな」と可能性を固める程度の証言は取れた。
「そっか、まぁ今は何も問題はないし、もう少し調べてみるよ、狸にしても姿を見た訳でもないから」
「うむ、何か解ったら遠慮なく連絡して来い、次の定期連絡は19時以降なら何時でも良い、ではおやすみ」と返事も待たずに切られた。
さて定期報告はこれで終わりらしい、不完全燃焼もいいとこだが話を切られたし、かけ直すような話題もない、少し寂しいとかやる事がないとか、そんな理由でバッテリーを消費するのもバカらしいし諦めて寝よう。
何時もと変わらない朝が今日もやってくる、だんだんと暖かくなってきた気もするが誤差の範囲内だろう、まだ4月だし夏には早すぎる。
さておき、今日も今日とて朝の狩りだ、まだ日も登り切らない薄明りの中、森を抜けて磯まで歩き、顔を出した岩の間の潮溜まりを重点的に調べ、竹筒を引き上げ、岩場を歩き回る。
牡蠣を金づちと鍋で剥がして確保し、朝の狩りを終える、今日の成果は牡蠣と鰯が二匹だ、ようやく運が戻ったらしいし、この勢いでやれる事をやっていこう。
漂着物の中からロープや使えそうな物を探す作業を済まし、焼き石による昼食を終えてシェルター作りに勤しむ事とする。
さて、現状は屋根がほぼ完成、床は梁が一本だけという感じで残る材料は竹が三本、取りに行けば大量にといった感じだ。
予定ではコの字に組んだ梁に竹を並べる床をイメージしていたが、平均的体型とは言え俺の体重だと床が抜けるかもしれない、ならば梁を増やして補強し、構造でなんとかするしかないだろう。




