久々の会話
「はい、もしもし高田です」この年老いた声は間違いなく祖父だな、元気そうで何よりだ。
「健太だけど、今大丈夫?」久々の家族との会話だった。
「健太か、かなり早いがどうしたギブアップか?」とかなりとんでもない事を言い出しやがった。
相変わらずのぶっ飛んだ思考でいらっしゃる、本当にお元気そうで何よりだ。
「いや定期報告だよ、10時だと流石に遅いし起きてるのも辛い、だから勝手で悪いが早めさせて貰った」と悪びれなく告げれば
「まぁ用意はしていたから構わんが、しかし驚いたぞ、それに奏さんは居ても健一はまだ帰っておらん」と母と父の事に触れてお叱りを受ける、まぁお叱りという程でもないかもしれないが。
「そっちはどう? かなり焦ってたみたいだし、まだヤバいの?」と話題転換も兼ねて二週間前の件を出してみる
「最悪一歩手前だな、なんとか延命したが今は損を覚悟で切ってる最中だ、正直に言って上半期は下火を通り越して氷河期に入ったよ」と有り得ない事を言い出した。
祖父が損をするなんて考えられないし、逃げを打つなんて尚更だ、下火なら下火なりに氷河期なら氷河期なりに稼ぐのが祖父の筈だし、祖父の持つ天運は多少の相場崩れでどうにかなる類いの物ではない。
「天運持ちの爺ちゃんが損って有り得ないだろ、しかも負け無しの化け物でソレって普通の人ならどうなるんだよ」と語気を上げて問いただす
「健太、お前は勘違いしとるようだが、負け無しの天運持ちなんざ初代を除いて一人もおらんよ、大小があるだけでお前や健一と変わらん程度には負けとる」と大した事でもないという口調で言う。
正直に言って信じられない、俺にとって天運持ちは常勝不敗が当たり前で、それが負けるなんて天変地異の前触れでもなけりゃ起こりえない、驚天動地の出来事だと思っていたのだがそうではなかったと祖父は言う。
と言うかマジで首吊りとか出てないだろうな、祖父の言葉通りとしても化け物に変わりはない筈だし。
「で、そっちはどうだ」という祖父の一言で思考を切り上げ
「あー、とりあえず水場の近くに拠点を張ってなんとかやってるよ、野草が見付からないから困ってるけど食う分には蛸とかいるから、後狸がいるのは確定で他にも何かいるっぽい」と一拍を入れるために切り
「んで、今は新しく川を見付けたから拠点を移すための準備中」
「狸なぁ、なんでそんなのがいる、当たり前だが動物を持ち込んだ記録なんて無いぞ、虫やら鳥ならまだ理解はできるがソレ以外は誰かが不法に持ち込んだと見るべきだろう、そんな孤島に狸捨てにいく意味は解らんがな」と嘆息してはいるが、祖父が知らないし解らないと言うなら謎が深まり何故が生まれる事になるんだが……やはり詳しく聞くべきだな。




