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文明の力

 拠点に戻り、用意しておいた薪に火を灯してから蛸を水洗いし、中華鍋で炒めてしまう、それほど手間は掛からないし、何より醤油を少量とはいえ使い、焦げた匂いがなんとも言えずにただただ贅沢を感じる。

 少しずつ燃え尽き、少しずつ弱くなる焚き火にサザエを入れ、焼き上がりを待つ間に蛸を中華鍋から箸で直接摘まみ、その触感と風味を楽しむ、食べなれた味に飽き飽きするにはまだ早いらしく美味しさが勝つ、例え飽きても食うがやはり気分的には美味しく食べたい、食事は楽しむ物だ。


 沸々とエキスが沸き上がるサザエのつぼ焼きに醤油を少し足らし、串を刺して引きずり出していただく、以前は独特の苦味や風味が苦手だったが此処に来てからは好物の一つだ、やはり自分で捕った物は違うという奴だろうか。

 いずれにしても今日の夕食はこれで終わりだ、相変わらず足りないが昨日に比べれば随分とマシで明日にはシェルター作りを再開しよう。


 さて、いつもならもう寝るのだが、今日は25日の筈だ、定期報告は夜の10時らしいが、さて今は何時だろう、かなり暗いが先ほどまで大陽が顔を出していたわけだし、大体だが7時半くらいだろう、かと言って10時まで待つのもバカらしい。

 祖父には申し訳ないが一足早く連絡といこうか。


 火の始末を済まし、テントに戻るとリュックの底に眠るケースから衛星電話を取り出し電源を入れる、少し間があってディスプレイから青白い光りが灯り、時間やなんかが表示される。

 中央に19:48、無機質なデジタル表示が文明の力として時間を知らし、表示の右上に4/25、日数感覚の正しさを教え、左上の電波マークと右上の97%が電波状況と充電率を表示していた。

説明書によれば大陽にソーラパネル着きのケースを向けて内部のソケットに電話を嵌め込めば、1日でかなり貯まるらしい。流石に電源を切っている現状で無駄な消費をした訳でも無し、まだまだ充電は満タンに近い、ここからは定期的に日数確認なんかをするだろうから消費は増えるだろうが賄える筈だし、半分を切っても電話が通じるなら緊急手段もある、何より今の世におけるバッテリーの持ちと強度は折り紙つきだ、簡単に危険域には近付かない筈。


 とまれ、このまま握りしめる訳にも行かず、1をプッシュした後、続けて通話ボタンを押す、一瞬の間を置いて発信しPrrrと呼び出し音が鳴る、今頃は実家の電話か祖父の携帯がけたたましい着信音を叫んでいる事だろう。

 やや時間を置いてガチャリと何者かが電話に出た。

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