祖父
「とりあえず最低限は取り繕えたと思うわ、修正が大変でかなり短くはなったけど笑われない程度にはまともよ」
それはつまり俺の散髪は笑えるという事なんだろうが否定はできないな、鏡を見ていないから元も今も不明だしここには水鏡くらいしかないのだがアバンギャルドでパンクな頭だっただろうとは思うし、少なくとも帽子無しで歓楽街に繰り出せばギョッとされる髪形ではあっただろう。
「ああ、ありがとう、しかし不器用と言っていたから頼まなかったんだが、料理以外は器用なのか? なら竹編み教えるけど」
手慰みと言うか余暇を過ごすのに竹編みによる工芸品の製作は中々に向いている、残念ながら俺では基礎的な部分しか教導できないがそれでも暇潰しの手遊びくらいにはなる。
「作りたい物も無いし遠慮しておくわ」
にべもなく断られるってのはこういうのを指すんだろうなってくらいにノータイムの拒否は、なんと言うか傷付くな、少しくらい悩むそぶりをして欲しいとも思うが、そんな気を使う必要もない程度には打ち解けたのかね、そのわりに必要事項以外での会話があまりないのだが。
とりあえず魚籠を編みつつお話を続けるとしようか、話題としてはいよいよ最後の大物である祖父について、とりあえずお昼休憩までにある程度の情報を渡せると良いな。
「さて、とりあえず祖父について話していこうと思うが、見ての通り片手間になるが構わないかな?」
作っている途中の魚籠を取り出して材料となる竹を並べつつ返答を待つ。
「お願いするわ」
そんな短い返答を受けて、さて何処から始めるかね。
「名前は高田宗一、ウ冠に示で宗、一はそのまま漢数字、年齢は78いや9だったか、我が家に生まれた数代振りって言うか二代続けての天運持ちの一人で技術投資に特化している、一応曾祖父が200年以上振りの天運持ちだからかなりレアなパターンだな、何にしても幼少期は普通に暮らして、中学高校になる辺りから風来坊気取って旅に出てたらしい、その頃に俺の親友の一人でもある昇のお爺さんと知り合って高校卒業と同時に日本アルプス徒歩のみ3ヶ月で縦断とか敢行してたらしいから若い頃はヤンチャとか不良とかを通り越してたって感じだな」
「幾つか国を巡って山を登ったりいろいろと見聞を広げて20歳くらいで実家に戻って投資を始めたらしい、まぁ天運持ちだし成功は約束されてるみたいな物なんだが残念ながら特化しているせいで向き不向きが解るまではそこそこのマイナスって感じだな、それでも1年か2年でプラスに持ち込んで、そこからは基本的にのんびり投資しながら山登ったりしてたらしいから風来坊の気質はまだ持ってるんだよ、もう歳も歳だから山は無理でも飛騨まで行く事はよくあるし」




