手招き
夕方まで休んでかなり体力は回復した、とは言え疲労の影はすぐそこに居て、手招きしながらこちらを見ているって感じだな、それでもまぁ昼御飯を食べた頃よりはマシで、この疲労感ももう少ししたら感じる事も無くなる筈だ。
今が過渡期で今が天王山、ここさえ越えれば後たったの三つか四つか作業が終われば完全フリーの日々が待っている。
昼寝でもしながら過ごすも良し、チェスに興じるも良し、温泉に浸かるも散歩するも自由な日々が待っているんだ、ここさえ越えればもう見えてくる。
なんて事を何度も思ったような気がしてしまうが、思い返せば短期的な目標としてで長期的な大観として思ったのは初めてに近いんじゃないかな、初めてと断言はできないが目先の問題は有るがその壁さえ越えてしまえばと言うのは事実だ。
とまれ、今は漁からだな、と言っても焼き干しを交換するから成果の一部だけしか食べないのだが、それでもまぁ気合いと言うか気負いと言うか、そんな物を背負うとしようかね。
潮溜まりの方は鰯、筒の方はタコが数匹か中々に好調だな、墨巣さんも黒鯛を突いているし夕飯には十分な量を確保できたな。
夕飯として黒鯛の塩焼きにタコの炒め、焼き干しを食べてテントに戻る、明日は石運びと竹運びかね、橋の材料として多少は集めていたと思うが絶対に足りないしな、とりあえず材料集めからだ。
若干は残る疲労と共に目覚めるのも連日となると慣れはしないが文句を言う気も起きないな、さてさて今日も今日とて作業を進めるとしようか、屋根の方は今日中には完成するだろうし残った時間は竹の搬入だな。
代わりにと言うべきか明日は休息になりそうだがまぁ一つ作業が片付いたご褒美とも言えない、ご褒美としては妥当だろう。
とりあえず準備を済ませて朝の漁に向かう、今日も暑い1日になりそうだが全く慣れないな、おそらく慣れる頃にはもう秋なんだろうが。
水を抜いてロープを手繰り寄せてと無駄に洗練され過ぎてもはや一芸とか極めるとかいう段階を幾つか飛び越えてしまっている、仮にこの方法で日常的に漁を行っている老練の漁師が居たとして、その場になんの躊躇いもなく参入して全く違和感なく溶け込めるだろうな。
本日の成果はウニが多めにサバが一尾、墨巣さんの突いたカワハギとまぁ何時もと同じだな、成果を拠点に持ち帰り、そのまま引き返して今度は石を抱えて坂を上る。
何度めかは解らないがこれがまだまだ続くと思うとげんなりしてしまうがウダウダ言っていても始まらないし終わらない、残念ながら眠っている間に作業を進めてくれる妖精は居ないし居たとしても石を運ぶのは無理だろうな。




