ウイニングラン
困った事にと言うべきか嬉しい悲鳴と言うべきか、熱効率が予想以上でご飯が上手く炊けているか自信が全くない、と言うか軽く焦げの匂いもするし少し早いが火から下ろしたいのだが濡らした布で持つにも熱く、それでも我慢して火から土鍋を外す。
これはしばらくトライアンドエラーだな、ただ竈はなんの問題もなく使えるという事は証明できた、若干の修正は必要だがようやくゴールテープを切れたな。
残りはウイニングランだけだが屋根の補強と含めてそこそこ長いランになりそうで閉口してしまいそうだが。
調理を終えて土鍋の蓋を開けてみればとりあえず見た目は問題無さそうだ、白いご飯が見えているし少なくとも生ゴメって感じじゃない、アルデンテの可能性と混ぜたら真っ黒の可能性がまだ有るが現時点では素晴らしい炊き上がりと言える。
竹の杓文字擬きで軽く混ぜてみればやはりと言うか軽く黒い、きつね色の部分もあるが比率としては黒優勢だな、とりあえず白い部分を食べるとして大丈夫だよな?
若干固さが残り焦げの匂いも移ってしまい美味しいとは言いがたいがそれでもお腹に納めて食事を終える、初めての機材とは言えまだまだ俺の修行が足りないという事かね。
そこそこ疲れが残る目覚めは何時でも気持ちが良いなんて言える筈もなく、暑さも相俟ってテンションもやる気も朝から一気に削がれていく。
それでも何時もと同じルーティーンとしてストレッチやらを済まして磯へと向かう、しかし暑いなそろそろ8月も半ばだしこの辺りがピークだとは思うのだが蒸し蒸しと天然のサウナは汗で貼り付くシャツと共にげんなりとした気分にしかならない。
何時もと同じくホースをセットして水を抜き、魚を捕っていく、そこそこのサイズのアジが多いな、やはり何かしらの変動が有るらしいが海水温によるものだと信じたい、間違っても火山噴火とか天災の前兆とか止めてくれよ、科学が発展していても地震と天気と火山はまだまだ完全には予測できないんだ、特に地震と火山はほぼ不可能に近い、天気は2ヶ月に一回くらいで外す程度に落ち着いてはいるが。或いは台風による変化の可能性もあるか、それならそれで良いのだがな。
ロープを手繰り寄せてブイを引き寄せ、そこからさらにロープを手繰り寄せて竹筒を確認する。
一つ目はカニに小魚か、あまり成果とは言いたくないがナシのつぶてではないだけマシだな、二つ目三つ目共に空で残りは籠だけだ、かなり重いがこれは期待して良いって事だよな。
蓋を開けて逆さにしてみれば黒い何かがボトリと落ちていく、そのままうねうねと動き回る細長くも太さがある姿は間違いない、ウナギ、いや穴子か、それでも中々に太った穴子でさて煮穴子か蒲焼きか迷うな。




