煙突
竹を埋めるだけでお昼までもう少し、流石に今から作業というと時間が微妙だし集中力も続かないだろう、休息に使った方が得策で何より作業に従事したところで進捗率はかなり少ない。
リスクとリターンを考えて少しばかり休んで損して得取れの精神でいこう、まぁ損と言っても半時程の時間を消費するだけだが。
ほんの僅かな休息で回復できたかどうかも微妙なところではあるが、少なくとも極端に減ってはいないと思う、まぁ数値化できない部分を考えても仕方がないしこのくらいにして食事といこう。
昼御飯を済ましたところで作業再開だ、まずは石を積むところからだな、煙が通るだけの通路を確保しつつ少しずつ勾配を付けながら石を積み、一部には砂利を流し込み墨巣さんが集めてくれた粘土と泥と土を練り上げて固めていきまた積んでと少しずつ形を作って行くが中々に難しいな。
とりあえず夕方まで時間を使って竹まで通路を伸ばす事に成功するがまだ完成にはほど遠い、ここから煙が抜けないように混合物で回りを埋める必要もあるし乾燥待ちもある、それでもとりあえず砂利はもう必要ないな、あるとしても少量でその分くらいは余裕で積まれている。
しかし中々に歪な様相だな、美しさとか機能美とかはなくもはや前衛的ですらある、或いはそういった物に美をみいだせる人物なら違った評価をするんだろうが俺には芸術的センスは薄い、実家でそこそこ素晴らしい芸術を目にしているんだが凄いんだろうなという感覚しかない辺りで知れている。
さぁ漁に向かうとして明日はいよいよ完成だ、まぁ屋根とかの付属品を作るのにさらに数日は必要なんだが、それでもようやく、本当にようやく一段落だ、とりあえず台風には間に合った、例え明日来たとしても崩れるのは一部で直すのは簡単で、そんな事より何よりまた一つ問題が片付く事に歓喜しかない。
残念ながらまだ少しばかり作業は残っているがそれでも沸々と沸き上がる歓喜の欠片を押さえ込むのはかなりの労力だ。
おそらく完成したら歓喜大爆発で台風とかで崩れたら絶望とかになるんだろう、たかが竈なんだが手製でかなりの愛着が既にあるし。
採れた量はそこそこに多く、それでも普段の八割に過ぎないという微妙な結果となる、まぁ順調に回復はしているし明日には戻るだろう、とりあえず今日は今日として美味しく頂こう。
ご飯を炊いて焼魚とお刺身の夕食を済ましイソイソとテントに引きこもる、さて今日の感じからして明日にはかなり体力も回復するだろうがさてどうなるかね。
寝覚めは最悪としか言い様がない、いつも通りだがまだ真っ暗で時間としてはおそらく1時間は早い、だというのに風はビュービュー、木々がバサバサと音を立てバチバチと雨がテントに叩きつけている。
これはもう奴だな、この時期にこれだけの大荒れは台風しかありえない、これはもう何もできないというか、このまま夜明けを迎えるなら夏休みシーズンだから関係ないが休校になりそうな荒れ模様だぞ。




