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祖母

 「ええ、お願いするわ」

そんな短い返答を受けて、さてとりあえず初めからいこうか。


 「まず名前は楓、話したかもしれないけど既に故人だな、俺の虫の知らせの四回目の理由であれが無かったら俺は死に目に会えてなかったな」

 まずはそんな自嘲から入る、とりあえず話の取っ掛かりだ。


 「生まれは確か滋賀だったかな? 洋食屋の娘として生まれて後を継ぐべく小学生の頃には包丁を握ってたらしい、そのまま高校卒業した後親父さん、俺からしたら曾祖父の師匠の師匠の元に修業に行くためフランスに渡航して3年だか4年だかした頃に親父さんが亡くなって帰国、その後フランスの師匠から弟子を紹介されて東京のレストランで修業して、2年してようやく一人前って頃にはお袋さんも倒れてしまってお店も抵当で無くなったらしい」

 「お袋さんの病院の都合で岐阜に移動して、県内のレストランに師匠の紹介で勤務、まぁ見習いからになるけど当時の料理長はフランスにいた頃の弟弟子らしくて大変だったそうだ、それでもホール業含めて頑張ってたら祖父と出会ってな、まぁ出会ったってより飯食ってるのを一方的に見たことがあるくらいらしいが、なんにしても出会って一年かそこらで料理長がフランスに帰国、そのまま鳴り物入りって言うか技術的な物で副料理長に就任した頃レストランのオーナーに紹介されてお見合いした相手が祖父でな」

「ほとんど毎日通っては旨そうにご飯食べてるの知ってたし、お付き合いから初めて結婚、その頃には料理長任されるようになって親父が生まれて少ししてお袋さんが亡くなって、怒濤の毎日を過ごして俺が生まれる少し前に仕事を辞めてのんびり過ごす事にしたらしい」

「俺の記憶にあるのは料理について真面目に語ってる姿とか、俺に料理を仕込む時の声とかだな、後は裏山で山菜を採ったり裏庭で育てた蒲公英でコーヒー作ったり、誕生日には必ずケーキを焼いてくれて、フレンチもイタリアンも和食も中華も最高に美味しくて、優しくて厳しくて、怒ると夜叉と般若と鬼神が降臨する、そんな人だな」


 残念ながらこれだけ話しても人物像としては薄い、表層をなぞっただけだ、祖母の全てではないがとりあえず情報としては十分だろう。

 俺の料理の師で料理の哲学を叩き込んだ人物で、かなり厳しく仕込まれたものだ、おかげで鶴子の親父さんから即戦力と言われる程に料理は堪能になったが残念ながら全てを継いだ訳でもない。

ケーキとかスイーツ全般は教わってないしな、代わりに山菜採りはかなりの知識を教えられているが。


 祖母から受け継がれた物の中でこの生活だと使えそうな知識となると調理術と山菜の見分け方くらいかね、まぁ調理術に関しては器具やら調味料の関係で十全に発揮とは言えないんだが。

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