実験
目覚めはいつでもスッキリではない、汚泥のような疲労は体に染み付いて離れず、寝袋から出たくないという気持ちが強い、それでも無理矢理にでも体を起こして、重い瞼を開いて動き出さなければならない、ここには朝御飯を作ってくれる人も居ないし、朝御飯を保管する冷蔵庫もないのだ、狩りに出なければ食える物は無い。
さて、踏み固められた地面と払われて開けた視界の道を行き、海に出る、やはりルートを開拓したのは正解だったな、元のルートは漂着物拾いの時に使えるし無駄も無かった筈だ。
いつもの磯でいつものように潮溜まりから鍋で水を掻き出して隠れた魚を捕まえてその辺の岩に叩きつける、もう一連の流れというか日常の一幕だな。
いつもと違うのは竹筒を持ち込んだ事のみだ、蓋はまだ完成していないから魚が入ったところで引き上げるまでに逃げられるだろう罠にもならない物、だがこの磯には異常に蛸が多い、大小はともかくとして2日に一匹は捕れるイメージがある、なら蛸壺ならぬ蛸筒を仕掛けてみようと眠る前の謎テンションによる謎思考の終着点の実験の敢行する事にする、成功すればそれこそ太い竹を切り分け片側だけ節を残した物を沈めるだけで捕れる筈だし数もかなりの量を確保可能だ。
仮に採れなくてもダメ元なのだから傷は負わないし、万が一が有るとしたら筒が流されてしまう事だが、それを言ってしまうと何時まで経っても罠の設置なんてできない。
紐で拾ったフロートと筒を繋ぎ、筒に石を入れて重しとして磯の中心目掛けて投げ入れる、フロートにもう一本、陸地と繋げる用の紐というか綱を取り付けて木に結び付ける、これで夕方まで放置して入ってたらラッキーって感じだな、一応は2日先までを目処にした実験だが成功確率は高い、それを確信するくらい蛸が多いのだ。
本日の成果は鰯っぽい小魚が二匹と小さめの蛸、それを拠点に置き、漂着物の中からロープや紐を重点的に探しつつ使えそうな物を見付け出す作業を終え、遅い朝食兼昼飯を腹に入れて、装備を固めて竹林へと歩き出す。
昨日の作業で大量に切り出された竹の中から良さそうな太さを持つ物を選んで担ぐ、やはり三本が限度だが梁や柱用の太い竹ならこんな物だろう、床は細身の竹を割いて列べる事を決めているし切り出している、倍とは言わないまでも五本くらいなら運べる筈だ、床の半分も埋まらないかもしれないが別に期日が有るわけでも無し、すでに完成も見えているのだから焦る事も無い。
休憩を挟んで竹を運び出し、狩り用に鍋と拾ったプラスチック容器を手に海に向かう、そう言えばになるがせっかく土鍋を拾ったのにまだ塩を作れていない、そちらもそちらで目標の一つで急務の一つだな。




