思い出の味
まぁ万が一にも足りないなんて事にはならないように今から補充と言うのも手だし幸いにして枝打ちして拾っていないものなんかは拠点周りだけでも数キロはある、それこそ適当な木を斬り倒してもいいし周りは木が沢山で伐採に困る事もない。
残念ながら今日は無理だが墨巣さんと交代で炎の番をしつつなら可能な筈だし乾燥に掛かる2日を利用する手もある。それこそ先んじて橋を作る前に温泉に続く通路の一部を、いや運搬の手間を考えると乾燥の2日で橋を作った方が楽だな。
予定を組立てつつ墨巣さんが運んできてくれた砂利を適切に流し込みつつ夕方を迎える、おそらく明日は俺が動いて墨巣さんが休暇って形になるだろうな、流石に辛そうだし実際辛い筈だ。
バケツ一杯の砂利とかどのくらいの重さになるのか想像もしたくない、しかも1日掛けてようやく六割に達した程度でかなり徒労感もある筈だ、仮に無理をしてでも動くと言うならこちらも無理をしてでも休んでもらうとしよう、それこそそこら辺の木に縛り付けてでもだ。
まぁ自分の体の事は自分がよく知っているだろうし、彼女の経験や性格から言って無理をするとは思えないが記憶に刻んで覚悟はしておこう。
漁を済ませてゴンスイとカワハギを手に入れて拠点に戻る、なんというか間抜けな奴も居たものだと言うべきか、偶然入り込んで出れなくなったんだろうな。
墨巣さんの方はクロダイと何時もと同じくで今日は鯛めしを楽しむとしようかね。
テキパキと鯛めしを作りタイミングを見つつゴンスイを焼いてから潮汁に、カワハギを肝和えに、流れる様な手付きで料理を作っていく様子はおそらくそれなりに堂に入った動きだろう。
まぁそういう風に仕込まれているし、鈍ったつもりは全くない、無駄なく洗練された動きで手早く素早くなおかつ手間隙かけた料理をと言うのが俺の基本で、鶴子の親父さん曰く味の面を無視するなら定食屋の跡継ぎに欲しいらしい、まぁ奴を伴侶にするのはゴメンだし何より残念ながら親父さんの怪我ですでに定食屋は畳んでしまっている、あそこのカレーは絶品だったんだがな。まぁスパイスの調合比は教えてもらっているが、なにかが決定的に足りないんだよな、祖母が生きていたなら解ったのだろうが店に行く事は無かったし比率を教わったのは畳んだ後だしで謎のままだ。
夕食に満足してテントに引きこもる、明日には全力はまずいか、ほどほどの所を目指して動き出す、幸いにして残った必要材料は砂利と粘土くらいだ、足りる足りないは別として数日も有れば揃う。
揃いさえすれば後は早い、まぁ若干ながら面倒な部分は有るがそれはもう少しばかり先になるし材料として面倒なだけで不可能でもないし極端に時間を必要とする訳でもない。




