タイムイズマネー
さて、本日も漁から新しい1日をスタートだ、いつものようにホースをセットして水を抜いて魚を捕る、昨日の夕方と同じく漁は少ないが昨日とは異なり時間に余裕もあるし二段目に取り掛かるとしようかね。
墨巣さんはというとまるで魔法を掛けられたとしか思えないくらい当たり前のようにカワハギを竹銛の先に捉えている。
なんというかもはや俺の苦労とかセンスとかじゃ言い表せない、素直な敗北感がいっそ心地いいな。
さてとりあえず魚を必要量は確保できたし作業に取り掛かるとしようか、時は金なりというし、現状では価千金の価値に等しい、それこそスパイ映画のエージェントが時限爆弾を解除するシーンよろしく1秒単位が大事になる。
まぁとりあえずは最初の一歩、昨日の続きで北側を制覇だな、大量の鳴子を背負い作業現場に移動して墨巣さんと手分けをして警戒網を張っていく。
ひたすら無心でとはいかないが時間を限界まで使うつもりで作業を進めていると不思議と気分も落ち着いてくるというか、トランスに近い感覚を覚えてしまう。その方が作業もはかどるしカオス思考に苛まれないから良いとは思うが気分的に問題だな。
まるで時間が加速したと言うか、バイクとかで地平線の先を目指して全力疾走herewegoしたと言うか、端的に言えば瞬く間に時間は過ぎ去り気付けば太陽は高く空腹の限界である。
どれだけ集中していたんだと問いたくなるが少なくとも北側をほぼ埋めて南側にまで警戒網は延びている、いつもより昼御飯が少し遅めとはいえ想定よりかなり進んだな。なんと言うべきかやはりカオス思考よりトランス状態の方が良いのかね。
まぁそこから気付いた瞬間カオスなんだが、どんな思考の転換の末にバイクで荒野を突っ走る姿を見たのか我ながら謎だな。
カワハギは少し手間を掛けて湯引きしての肝和えに小魚はそのまま焼いて干していく、代わりに焼き干しを炙って幸せの味だな、まぁご飯が無いからやや残念ではあるのだが。
ただ米は探すまでもなくそこにある青い鳥と言うか自生している筈もないから探す自体が労力の無駄でしかないか、仮に自生してたとしてもこの時期だとまだ出穂、いや南だし早ければしているかな? どちらにしても収穫乾燥脱穀を考えると笑顔の味には時間が足りないな。
精米済みが送られてくるというだけでかなりのアドバンテージと言うか、最悪ボウズで焼き干し使い果たしていても最低限の食事は確保できているようなものだからな、ただ祖父の掌の上でと言うかマリオネットの気分だな。
さて午後からの作業だ、朝は北西から南を済ませたし午後は東北東から南にだな、隣に墨巣さんを連れだって鳴子を設置していく。
北側を埋める事ができればかなり安全は確保できると思うがこれに依存して胡座をかくなんて事はできないがとりあえず一安心はしたい。
まぁ本気で拠点に来るつもりならこんなもの容易く破れるティッシュペーパーより脆く右から左に動くベルトコンベアと言うかドミノ倒しと言うか、決められた手順を淡々と済ませていくように簡単ではあるのだが。




