轟音
とは言え、今日のところは休むべきだろう、往復で4時間、悪路を進むには堪える、大学時代は毎日のようにジョギングで体力作りに勤しんだ物だが、アスファルトやコンクリートと砂地や岩場では違いすぎる。
体力にはかなり自信があるがやはり状況が異なるとなんとも言えない、何より空腹が厳しい、魚は捕れても小魚が主で数も少ない、かと言って近場に漁場は見つかっていないし、移動時間を考えれば満潮に会う可能性もある。
かと言って今の状態に満足はできない、例え贅沢の言えないような状況とはいえ、より良い条件を欲するのは人の常という物だ。そして心としては残念だが体はまだ無理ができる、この程度で倒れるようならば最初っからサバイバルをする資格は無いだろう、少なくとも休むのは今日ではない。
サザエや蛸を昼食として腹に詰め込み、水を補給しトイレを済まして荷物を背負って竹林に向かった。
急ぎ足で1時間強、後々の探索時間を考慮してやや早足で踏破し、竹林の入口となる目印に到着した。
そこから海沿いに西に向かいながら耳を済ませて水の音が聞こえてこないか確認する、潮騒のザーザーとした音しか聞こえてこないが感覚を研ぎ澄ましておいて損はない 登る途中から聞こえてくるドドドドドドという轟音は滝だろうか、それも瀑布の部類に入る滝、ならば川が流れているという事なのだろう、丘の頂上までもう一頑張り、そこからなら水の流れが見えるかもしれない。
異様というべきだろう、丘の頂上から少し下った位置から切り立った崖を海に向けて流れ続ける大瀑布、幅は約3メートル、高さ約12メートルくらいだろうか、水量はかなりの物で白く泡立つ水が止めどなく流れていた。
少なくとも河口という光景ではない、ゴロゴロした岩場に砂利すらない川底、まるで渓流のような様相だが上流を見ても先を見通せる限界まで川であり、少なくとも100メートル先から流れている、今の水場にも滝は幾つかあるが海からはほんの十分ちょいの距離に水元がある小さな小川である事を考えれば比較するのも馬鹿らしくなるくらいの差だな。
どちらの川にしても河口付近の川幅が狭く岩がゴロゴロしているのは、やはり若い川という事なのだろう、島ができてほんの二百年ちょい、ある程度は川岸や岩を削った筈だが、度重なる噴火もあったし川としての年齢は100年かそこらだろう。




